web用『うんこ漢字ドリル』タイトル画

すばらしいですなあ、『うんこ漢字ドリル』(古屋雄作/文響社)。小学1年生から6年生まで学年別に出ていて、6冊とも全文例がうんこ話!
小学校6年間に習う漢字は1006字。そのすべてに読み取り例文が1つ、書き取り例文が2つずつあるから、総計3018のウンコ話が綴られている。恐るべき書物だ。

このドリルは爆発的に売れた。
ああ、まぶたに浮かびますなあ。全国の小学生が「うんこ、うんこ」と言いながら、漢字の実力をメキメキとつけていく光景が。ニッポンの未来は実に明るい。黄金に輝いている!
ここでは、この名著で次々に語られるウンコ現象を、できるだけ科学的に考えてみよう。

異常なうんこの量とは?

まずは
「先生のうんこの量は異常だ(6年・異)」。
筆者も長く生きているが、うんこについて「異常な量」という表現に初めて出遭った。新鮮だ。そして、そう言われると、異常なうんことはどれほどの量なのか、すごく気になる。

『うんちとおしっこの100不思議』(左巻健男監修 山本文彦・貝沼関志編著/東京書籍)によれば、「バランスの良い食生活を送っている大人が一日に出すうんちの量は、二〇〇~三〇〇g」だという。
ここでは、中間値を取って250gと考えよう。「異常」というからには、この先生はその5倍ぐらいのうんこをされるのではないだろうか。
すると、1250g。右の『100不思議』によれば、健康なうんこの密度は水の1.06倍なので、体積は1180mL。直径を4㎝とすれば、長さは94㎝になるだろう。まことにもって異常であり、水洗トイレで流せるかどうか心配だ。

しかしこの先生、どういうわけでうんこの量が異常であることを知られてしまったのだろうか。
不思議に思って『うんこ漢字ドリル』を片っ端から調べると
「校庭で、恩師といっしょにうんこをした(5年・恩)」
そうか、このときか~。

巨大、巨大、また巨大!

『うんこ漢字ドリル』には、これを上回る巨大なうんこが、次々に登場する。
「砂場のなかから、約三メートルもあるうんこが見つかった(6年・砂)」
これも直径が4㎝なら、重量は4㎏、常人の16倍!
「『それは丸太ですか?』『いいえ、うんこです』(2年・丸)」
丸太のようなサイズだから、仮に直径20㎝、長さ2mとすると、重量は67㎏、常人268人分!
「もうちょっとで天井にくっ付きそうなきょ大うんこ(4年・付)」
高さ2m、直径3mのトグロ型だとすれば重量5t、2万人前!
しかし、これほど大きなうんことなると、自重で潰れたりしないのか。
「このうんこはかたいので、上に乗っても大じょうぶだ(3年・乗)」
「わたしのうんこは岩石よりもかたい(2年・岩)」
なるほど、それなら大丈夫でしょう!

web用『うんこ漢字ドリル』図A

さらに、「大きなうんこが交通のじゃまになっている(2年・交)」
「たんけん家がうんこピラミッドを発見した(3年・発)」
「大昔、うんこでできた大陸があった(3年・陸)」
など驚異の巨大うんこが続出するが、極めつけはこれだ。
「宇宙には太陽系より大きなうんこがあるかもしれないんだ(6年・系)」
デカすぎて、もう想像もつきません!

うんこの超常現象

このドリルの世界では、しばしば異様なことが行われている。
「駅の売店でうんこを売る(2年・売)」
「インターネット上でうんこが売買されている(2年・買)」
「うんこを一つ十円で売ります(1年・十)」
「あっちでうんこが大安売りしているよ(3年・安)」
これほど盛んに売買されているということは、この世界の経済においては、うんこが重要な役割を果たしているのだろう。そう思って読み進めると
「この国ではうんこが通貨の代わりになっている(4年・貨)」
「うんこで税金を納めることが可能になった(6年・税)」
「日本のうんこは、いずれ世界の経済を動かすだろう(6年・済)」
やっぱり!

それにしても、10円とは安い。さすがうんこだが、すると次の申し入れは危険である。
「この黄金とうんこを交かんしましょう(2年・黄)」
これを書いている本日の相場で、金は1gあたり4827円。うんこ1人前250gが10円で、その黄金が1㎏あるとしたら、120tのうんこをドバドバドバーッと渡されるよ! 家に入りきらないよ!

かと思えば、
「お金が足りなくてうんこが買えない(1年・足)」
「この予算ではうんこが買えない(3年・予)」
「有り金を全部使ってうんこを買いしめた(3年・有)」
「奮発して最高級のうんこを買った(6年・奮)」
うんこは高いのか安いのか、サッパリわからんな。う~んう~ん。

やたらにもらす謎

このドリルの一大特徴は、うんこがすべて「うんこ」と表記されていて、「うんち」などの別表記は見られないこと。
何か方針があるのかなあ……と思ったら
「『うんこ』と『うんち』は区別して使おう(3年・別)」
「きみは『うんち』と『うんこ』を混同しているんだ(5年・混)」
「『うんこ』を『うんち』と書いた者は不可とする(5年・可)」。
そ、そんなに違うものなんですか!?

さらに目を引くのは
「テストで満点を取った喜びでうんこが全部もれた(4年・満)」
「武者ぶるいではなく、うんこをもらしただけです(5年・武)」
「うんこをもらす先生だけれど、僕は尊敬しています(6年・尊)」
など、やたら「もらす」話が出てくることだ。全3018例文中88もある。この本の世界では「うんこはもらすもの」と決まっているのだろうか。

と思っていたら、
「少しくらいうんこをもらすほうが健全だ(4年・健)」
「『もらす』という動詞はうんこによく似合う(6年・詞)」
うんこもらしを全面肯定! そこまでの信念がおありなら、もはや私から申し上げることは何もありません。
本当にオモシロイなあ、『うんこ漢字ドリル』。みんな、うんこでがんばろう!【了】

本文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか