web用ウルトラの寿命タイトル画

ウルトラマンは身長40m、体重3万5千t。マッハ5で空を飛び、腕からは必殺のスペシウム光線を発射する。どれもこれもすごいスケール、すごい能力だ。
これらだけでもオドロキなのに、『ウルトラマン』の最終回では、さらにもうひとつ、すごい事実が明らかになる。ウルトラマンが自ら「私はもう2万年も生きた」と述べたのだ。
2万年も生きた! ということは、ウルトラマンの年齢は2万歳! 

これには本当に驚いた。今から2万年前といえば、氷河時代の真っ盛りではないか。日本列島がユーラシア大陸とつながっていて、ナウマンゾウやオオツノジカが行ったり来たりしていた時代。ウルトラマンは、そんな大昔に生まれたというのだ。本来なら、化石になっていても不思議ではない年齢である。

まことにウルトラな話であるが、生物というものはそんな長く生きられるのだろうか。

北京原人と同級生!?

ここでは、話をシンプルにするために『ウルトラマン』から『ウルトラマンタロウ』までの昭和の5作品に登場したウルトラファミリーを中心に話を進めよう。
彼らの年齢は、次のように設定されていた。

ゾフィー 2万5千歳
ウルトラマン 2万歳
ウルトラセブン 1万7千歳
帰ってきたウルトラマン(ウルトラマンジャック) 1万7千歳
ウルトラマンA 1万5千歳
ウルトラマンタロウ 1万2千歳

ウルトラマンだけでなく、他の兄弟たちもすさまじい高齢である。だが驚くべきことに、一族のなかでは彼らはどうやら若いほうらしい!
ウルトラの父と母、ウルトラマンキングという伝説の長老の年齢は、彼らを遥かに上回る。

ウルトラの父 16万歳
ウルトラの母 14万歳
ウルトラマンキング 30万歳

これはもう、ナウマンゾウどころの騒ぎではない。ウルトラの父と母はネアンデルタール人(20万~2万数千年前)と同世代であり、キングに至っては、その先輩筋の北京原人(50万~20万年前)と同年代の生まれということになる。いやはや、これにはもう、腰が抜けた……。

web用ウルトラの寿命図A

誰を基準に考えればいいのか?

気を取り直して考えよう。不思議なのは、彼らの年齢構成だ。
一見したところ、地球に来たウルトラ兄弟たちは立派な大人である。特にゾフィーなど、学校に通っている子どもがいたとしてもおかしくないほど大人の雰囲気を湛えている。
ところが、そのゾフィーさえウルトラの父の6分の1の年齢でしかないというのだ。どうなっているのか?

人間と比較して考えてみよう。いちばん若いタロウは、1万2千歳である。これが人間の24歳にあたるとしたら?
これを基準に計算すると、2番目に若いウルトラマンAは30歳。その上のセブンとウルトラマンジャックは34歳。まあ、そんなものかという気もするが、ウルトラマンは40歳で、ゾフィーは50歳。戦士としてはそろそろキビシイ年齢だ。

その上の世代はとんでもなくすごい話になる。
ウルトラの父は320歳、母は280歳。最高齢のキングに至っては、なんと600歳!
劇中では全員元気に怪獣と戦ったりしていたが、人間だったら生きていられるはずのない高齢っぷりなのだ。

逆に、キングを基準にしてみよう。人間が生きられるのは、120歳が限界といわれる。30万歳のキングが人間の120歳に相当するとしたら、どうなるのか?
父は64歳、母は56歳。自ら怪獣と戦ったりするにはやや高齢という気もするが、まあ納得できる範囲である。
問題はウルトラ兄弟たちの年齢だ。最年長のゾフィーさえ10歳! ウルトラマンが8歳で、セブンと帰ってきたウルトラマンが7歳、Aが6歳、タロウが5歳……。う~む。われわれ地球人は、こんなチビッコどもに守ってもらっていたの!?

web用ウルトラの寿命図B

ウルトラマンの年齢は正しい!?

ウルトラの人たちの年齢問題について考えていると、どうしても壁に突き当たってしまう。ここからは、根源的な問題だけを考えよう。生物が何万年も生きることができるのだろうか。

自然界の動物は、大きいものほど長く生きる。
たとえばハツカネズミの寿命は1年半から2年、アフリカゾウは70年、シロナガスクジラは100年以上といわれる。
ウルトラマンの体重3万5千tは、成人男性の53万倍だ。これだけ大きければ相当に長寿でも不思議はないが、具体的にはどれほど長く生きるのか?

1959年、ザッハーという生物学者が多数の哺乳類について調べ、寿命には体重だけでなく脳の重量も関係する、という説を提唱した。それらの関係は「ザッハー方程式」という式で表されている。
この方程式を、ウルトラの人々に当てはめたらどうだろう。
ただし、ザッハー方程式は哺乳類にしか適用できない。地球からはるか遠いM78星雲で生まれたウルトラの皆さんが、人間と同じ哺乳類なのか……。
怪獣図鑑にもその点は書かれてないが、両親から子どもが生まれたり、ウルトラの母に乳房らしきものがあったり、哺乳類と共通する特徴が見られるのも確かだ。乱暴だが、ここは思い切って、ザッハー方程式を使ってみよう。

ウルトラ族の脳の重量を人間と同じく体重の2・1%だとする。
ゾフィーからキングまでの前述9人の平均体重は4万2300tだ。
この数値をザッハー方程式に代入すると――。 おおっ、ウルトラの人々の寿命は2万1600歳! キングや父母たちを別とすれば、ゾフィー以下には充分に当てはまる結果ではないか。

ところがこのヨロコバしい結論は、意外な情報によって根底から否定されてしまう。
『ウルトラ怪獣大図解 大伴昌司の世界』(小学館)の裏表紙に、ウルトラマンの内部図解が載っており、そこに「濃縮脳。10gしかないが、知能指数1万」と書かれていたのである。
脳がたったの10g!?
これではウルトラ一族の寿命は、極端に短いことになってしまう。だが、これを書かれた大伴昌司先生は怪獣図解のパイオニアで、ウルトラマンや怪獣たちの設定はこの先生が考えたものが多い。
そこで素直に「体重3万5千t、脳重量10g」という数値をザッハー方程式に代入してみたところ……、うわ~っ。寿命はたったの72日!
日本人の平均寿命は82・7歳だから、その420分の1でしかない。

うーん、すっかりおかしな話になってしまった。結局ウルトラマンは長寿なのか、短命なのか。
よくわからないが、ハッキリしているのは、いずれにしても極端すぎるということですなあ。【了】

本文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか