web用『ポプテピピック』タイトル画

大人気の『ポプテピピック』が、筆者には全然わかりません!
でも読者からはどんどん質問が届く。ベーコンムシャムシャくんとは何者ですか? サンバ師匠は、何に傷ついたのですか? 竹書房彦摩呂という人は実在するのですか?
知らーん。質問の内容もわからーん。マンガを読んだら、さらに混乱した。深夜のアニメも見たけど、全然ついていけません。ポリスメーン!
そこでもう開き直って、科学的に気になるところだけ書くことにします。『ポプテピピック』にはいちばん合わないアプローチのような気もするけど、筆者にできるのはこれだけなのだー。

科学的に考えてみるぞい

行頭の話数は、コミックス1~2巻の各4コマの上に記してあるナンバーなので、本を持ってる方は、照らし合わせながらお読みください。
[14話]壁ドンしたら、壁と床が抜けて、レールの上を走っていく! これにはびっくり。物理的にあり得ない現象だ。なぜなら、ピピ美の手は壁を前方に押しているけど、足は壁と一体になった床を後ろに押しているから。
[35話]ポプ子が「今日も元気だ セルライトが光る」と言うと、ピピ美が「セルライトは光らない」。セルライトは皮下脂肪が老化して、皮膚に凹凸ができたもの。光らん。
[70話]マリンバを叩きながら右へ右へと進むポプ子。最後はスキーのジャンプ台から飛び出す。スキージャンプの離陸速度は時速85㎞にも達する。鍵盤の幅を5㎝として、すべて叩いていったとすると、離陸の直前は1秒間に470個を叩いたことに!
[143話]にきびケアの薬で、まさやんが溶けた。にきびケアの薬には、ビタミンC誘導体やイソプロピルメチルフェノールなどが含まれている。後者で溶けるとしたら、まさやんはニキビの原因となるアクネ菌だったことになる。
[196話]しゃっくり100回したら死ぬといい、ポプ子99回目で自爆。しゃっくりは横隔膜の痙攣だから100回でも死にません。それより自爆できるポプ子がすごい。
[261話]ボクサーが「もうだめだ!! タオルをなげてくれ!!」。タオルはポプ子が持ってて、ぐるぐる回して飛んでいく。タオルを回しても絶対に飛べないから、返してやれ。
[276話]ポプ子が乗った巨大なだるま落とし(一段あたり推定940㎏)。ピピ美はハンマー(推定110㎏)で叩いて低くしていくが、彼女に求められるハンマーの速度は、時速190㎞。ハンマーはポプ子の顔面を直撃してたけど、これ、死んだと思う。
[323話]ポプ子が「万有引力とは一体…」と考えていると、リンゴが木から落ちて、地面に立った鉛筆に刺さった。実験と計算で、落ちてきたリンゴ(使用したものは284g)が鉛筆(長さ15㎝、底面の対角線7.9㎜)に刺さり、描写どおり「貫通はするけれど、地面には届かない」落下高度を求めると、1.8~3.4m。おおっ、まさにリンゴが実る高さだ。『ポプテピピック』が科学的に正しい描写なんて、アタイ……ゆるせへんっ!!

竹書房を破壊するパンチとは?

 最後に、読者からいちばんたくさんもらう質問。そう、ポプ子vs竹書房だ。
137話でポプ子は、竹書房の看板にマジックで「指定暴力団」と書き込んで警察に通報していた。それをやったら、捕まるのは絶対に自分だと思うが、それでも怒りは収まらなかったようで、155話では巨大になってパンチを振るい、ついに竹書房ビルを破壊した。これに費やしたエネルギーはどれほどなのだろう?
飯田橋にそびえる竹書房ビルは、9階建て。高さは30mほどと見られる。地図で測定すると、間口は18m、奥行きは10m。このサイズのビルは、重量が1900tほどあり、爆破解体するにはダイナマイト1tが必要である。
この竹書房ビルと比べると、巨大化したポプ子の身長は45mくらい。もともとの彼女の体格を「身長150㎝、体重45㎏」と仮定すれば、相似拡大したポプ子の体重は1200tになっているはずだ。そして、人間の体格から割り出すと、右腕の重量は60t。すごい体格だが、ダイナマイト1t分のパンチを放つとなると、右腕を時速1700㎞=マッハ1.4でぶち込まなけばならない! うーむ、なかなか手ごわいじゃないか、竹書房。
……と、ここまで書いた翌日、仕事で飯田橋に行ったところ、JRの駅に「竹書房」への案内板を発見した。「竹書房 500mぐらい」というアバウトな表示にもビックリしたが、何より驚いたのは社名の下に『ポプテピピック』のイラストがあって、ポプ子が「竹書房!? 破壊したはずでは……」と言ってたこと。うははっ。マンガを読んでない人には、全然わからん案内板じゃないか。
ふーむ。こういうすごい出版社だからこそ、ああいうマンガが誕生したのだな。あーそーゆーことね、完全に理解した。【了】

web用『ポプテピピック』図A

文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか