web用出身地列伝タイトル画

子どもの頃から怪獣好きである。巨大で強いのも理由だが、「きちんと生物として描かれていた」という要因も大きい。怪獣は身長や体重や弱点が明確で、出身地まで設定されていたのだ。
この「出身地」という項目、怪獣図鑑にも必ずといっていいほど載っていて、たとえばゴモラの出身地は「ジョンスン島」、シーゴラスの出身地は「西イーリアン諸島近海」などと書いてあった。そう言われると怪獣の実在感がグッと強くなるではありませんか!

出身地で忘れられないのは、『帰ってきたウルトラマン』に出てきた怪獣ザニカである。腕がハサミになっていて、口から泡を吹くこの怪獣が飛来したとき、正義のチームMATの隊員たちは、劇中でこんな会話を交わしていた。

隊長「あの怪獣、カニにそっくりだ」
隊員「やっぱり蟹座の怪獣なんでしょうか」
隊長「うむっ」

えっ!? 蟹座という名前は、地球から見た星の並び方がカニを思わせるからついただけ。そこの生物が姿かたちは、カニと関係ないのでは!? ところが、ナレーションがこう続いたのだ。
「伊吹隊長の推定は正しかった」
「地球に現れたのは(中略)蟹座の怪獣なのであった」

これにはひっくり返りそうになったが、やっぱり出身地の話は面白い!
 そう思った筆者は、『ウルトラQ』から『ウルトラマンタロウ』までの怪獣について、出身地を調べてみたことがある。その合計は225匹。図鑑によって記載されている出身地が異なる怪獣もいたが、その場合は筆者なりに納得のできる場所を選んだ。
その結果、思いもかけない事実が浮かび上がってきたので、ここで紹介したい。

いちばん多い出身地は?

調べた結果を先に示そう。怪獣たちの「出身地」になっている場所のベスト5は次のとおり。

第1位……東京(37匹)
第2位……宇宙(25匹)
第3位……地底(18匹)
第4位……異次元(17匹)
5位……海底(6匹)

なんとなんと、最も多くの怪獣を輩出している地域は「東京」なのである!
地球生まれの怪獣160匹のうち、実に37匹が東京出身。23%という占有率は、極度の一極集中だ。

狭い東京のどこに、これほどの怪獣がいるのだろうか?
具体的に見てみると、グドンやドドンゴが「奥多摩」、タッコングが「東京湾」、コスモリキッドが「多摩川」。確かに、東京で怪獣が出るとしたら、そのあたりという気がするが、都市部も平穏ではない。住宅地の土管の落書きからガヴァドンが登場し、マンションが怪獣になってビルガモが出現、現在の東京都庁が経っているあたりからはツインテールとグドンが現れた。油断なりませんなあ、東京は。

これで、幼い頃からの疑問が解けた。筆者はテレビを見ながら「なぜ怪獣は、東京にばかり現れるのだろう?」と思っていたのだが、別に理由はない。ヤツらは地元をうろつき回っていただけなのだ!

ジャミラの出身地は宇宙?

続いての大派閥は「宇宙」。
東京から一転、あまりにも豪快な括り方だ。地球も宇宙の一部だから、わたしもあなたも「出身地は宇宙」といえば、いえる。

確かに、そう記述するしかない怪獣もいる。
スカイドンは、ある日突然、空から落ちてきた。ただ寝たり歩いたりするだけなのだが、20万tというあまりの体重ゆえに、科学特捜隊もウルトラマンも四苦八苦。そういう怪獣は、出身地も漠然と「宇宙」くらいがふさわしい。怪獣の性格や物語を絶妙に反映した名出身地といえよう。

だが、ジャミラの出身地も「宇宙」とされているが、これはいいのか。
ジャミラは、地球人の宇宙飛行士が、水のない星に置き去りにされたため、怪獣に変異してしまったカワイソウなヒトなのだ。ジャミラというのも、その飛行士の名前。明らかに地球生まれで、タイトルも「故郷は地球」だったのに、出身地が宇宙なんて……。

web用出身地列伝図A

第3位は「地底」。
たとえば、キングゼミラは「東京の地下」で、これも地底に分類した。アブラゼミの怪獣だから、成虫になるまでは地底で過ごすというのは理にかなっている。
冬眠怪獣ゲランは地底1万m、原始地底人キング・ボックルは地底30㎞(3万m)、地底怪獣テレスドンは地底4万m。地底の5千mよりも深いところには、過酷な環境で生きられる細菌さえも棲まない。エサになる動植物などいないし、空気も届かないと思われるけど、皆さんどうやって生きているのかなあ。

◆実在する地名が続々

日本生まれの怪獣は、出身地が具体的な地名で表されることが多い。たとえば、レッドキングは「多々良島」、サドラーの出身地は「霧吹山」だ。
これらの地名は、いかにも実在しそうでいて、おそらく架空なんだろうな、という雰囲気も湛えている。その不分明さが、ひょっとしたら怪獣もいるかも知れないという不条理感を呼び覚ます。見る者を作品に引き込む優れた出身地といわねばならない。

ネロンガの「伊豆伊和見山」も同じだが、ヒドラの「伊豆大室山」となると、話が違ってくる。大室山は実在する山で、伊豆・伊東観光協会公式ホームページには、「伊豆高原のどこから見ても、お椀をふせたような柔らかな曲線のシルエットが美しい大室山、標高580mの山頂に直径300mのすり鉢状の噴火口を持つ休火山」と書かれている。

箱根出身の怪獣は多くて、キングザウルスⅢ世は「箱根山中」、ロードラは「箱根付近」、レオゴンは「芦ノ湖」。出身地ではないけれど、『ウルトラQ』では箱根に向かうロマンスカーが宙を飛んだりしていて、箱根はなかなかオソロシイところですな。

実在する地域の怪獣たちは、他にも多い。カウラの出身地は「岡山県」。桃太郎で有名なところである。グロンケンは、蕎麦がおいしい「長野県松本市」、ベロクロンはぶどうが採れる「広島県福山市」、ダンガーはマグロのジャーキーが美味な「沖縄県南大東島」、パゴスは納豆の名産地「茨城県」、ザンボラーは鳩サブレーで有名な「鎌倉市」。つい名産の食べ物も紹介してしまったが、そう思うと怪獣もグッと身近に感じられませんか?

そうかと思えば、よくわかならない出身地も多い。カイマンダーとシシゴランの出身地は「神社」。ムカデンダーは「八幡神社の裏山」。スフィンクスの出身地は「小学校の校庭」で、ザイゴンに至っては「ビル街」である。いや、それらは施設名であって、地名ではない。「私の出身地は病院です」などと言うようなものだ。サウンドギラーに至っては「騒音のある所」。もはや施設名ですらない。

もう何でもアリの出身地だが、筆者は時間があるときなど、いまでも怪獣図鑑の出身地の項を眺めて、怪獣たちがそこで育ってきた様子などを想像し、ニコニコしてしまう。【了】

文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか