web用『うるまちゃん』タイトル画

土間うまるは、名門・荒矢田(あらやだ)高校の1年生。歩けば誰もが振り向くほどの美人で、スタイルもいい。成績も一番で、泳げば校内新記録。非の打ち所がない女子だ。
ところが家に帰ると、一変。身長が縮んで幼児体形になり、ハムスターのフードをかぶって「だっらああああー」。コーラとお菓子を食べながら、明け方までネットゲームに耽るダメ人間になってしまう。このときの体格の変化は本当にすごくて、帰宅してアパートのドアを閉めるや否や、4分の1ほどの大きさに!

もちろん、誰だって家に帰ればホッとするし、ダラダラしたくもなる。うまるの異常な体格縮小も、その心理表現なのかもしれない。最初はそう思ったのである。

ところが、マンガのなかで、家を訪ねてきたクラスメイトの本場切絵(もとばきりえ)は、小さなうまるを見て、こう聞いたではないか。「うまるさんの妹さんですか?」。そして、うまるも「妹のこまるです」と答えた。
うおおおっ。物語内の事実として小さくなっているらしい! だが、あまりに不思議である。いったいどうなっているのだろうか?

ホントに縮んだ!

ファンブック『干物妹!うまるちゃんF-ひもうと絵日記-』の人物紹介によれば、うまるの身長は「家うまる40㎝・外うまる160㎝」。
両者の身長差が、具体的な数字で示されているのには驚いたが、何より驚くべきは40㎝という小ささだろう。厚生労働省国民健康・栄養調査(2015年)によれば、1歳女児の平均は身長77.8㎝。家うまるは、その半分ほどしかないのだ!

当然、体重もめちゃくちゃ軽いだろう。身長が4分の1なら、体重はその3乗で……と思ったが、いやいや、そんな普通の計算は通用しない。体重が身長の3乗に比例するのは相似な場合で、外うまると家うまるは全然相似ではないからだ。
コミックス1巻の表紙で測定すると、身長160㎝の外うまるは6.8頭身。40㎝の家うまるはピッタリ2頭身。頭部の上下は、23㎝⇒20㎝と少し小さくなっただけなのだ。顔の横幅に至っては、17㎝⇒18㎝と拡大。ところが首から下は137㎝⇒20㎝とモーレツに縮小している! 

ここから、外うまるの体重を50㎏と仮定してパーツ別に計算すると、家うまるの体重は1.9㎏。ただしそのうち1.75㎏、すなわち92%は、アタマの重量である!
 結局、うまるは帰宅すると、体重が48.1㎏も激減し、出かけるときには同じだけ大増量していることになる。どうすればそんなことが可能なのか、サッパリわかりません。

うまるの日常を心配する

科学的に心配なのは、家うまるの体型では、家での生活さえ大変だろうことだ。
まず、命にかかわるのはお風呂。
頭部の上下が20㎝、首から下が20㎝では、浴槽にお湯が30㎝も溜まっていたら、確実に溺れるだろう。切絵が泊まりにきて2人でお風呂に入ったとき(切絵は、家うまるを「こまる」と思い込んだまま)、うまるは気持ちよさそうに顔を浴槽の上に出していたが、浴槽内はどうなっていたのだろう? 踏み台にでも乗っていたのかなあ。

家事も容易ではない。たとえば、洗濯機を使おうとしても届かない。この場合は、台があっても洗濯槽の底には手が届かないから、洗濯物を取り出せない。同じように、トイレやお風呂の掃除もムリ……というか、キケンである。

また、掃除機を使うのも難しい。掃除機のパイプが長さ1mだとすると、その端を肩に担いでも、パイプと床の角度は12度しかないので、おそらく吸い込み口が床から浮いてしまう。これでは掃除機が機能しない!

web用『うるまちゃん』図A

家うまるが料理をするとは思えないが、やったとしても包丁も持てないだろう。筆者の家の包丁は長さ29㎝、重さ120gだが、家うまるがこれを持つのは、外うまるが長さ116㎝、重さ5.6㎏の大刀を振りかざすのと同じ。危なすぎる!

何より、身長がいきなり4分の1になると、うまる本人がモーレツな違和感を覚えるのではないだろうか。身長160㎝の外うまるがバタッと転んだ場合、つまずいてから0.4秒後に地面に頭をぶつける。
しかし身長40㎝の家うまるが転ぶと、ぶつかるまでの時間はわずか0.24秒! 時間が半分になってしまったら、顔面をモロに打つと思う。

ふーむ、こう思えば、家うまるはゴロゴロしているより仕方がないかもなあ。その怠惰な生活が科学的には正しい……という結論である。意外!【了】

本文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか