web用ウルトラマンその後タイトル画

怪獣を倒し、空へ去っていくウルトラマン。科学特捜隊のメンバーが「でも、ハヤタはどこに……」などと言っていると、遠くから「お~い!」と声がする。見れば、ハヤタが満面の笑みで手を振りながら駆けてくる。
『ウルトラマン』の終わりくらいに、何度も何度も見たシーンである。
しかし、冷静に考えると不思議である。ウルトラマンは空の彼方に飛び去ったはずなのに、なぜハヤタはすぐ近くから現れるんだ!?
これまであまり描かれることのなかったウルトラマンのその後について、本稿では真剣に考えてみたい。

どこでハヤタに戻るのか?

ウルトラマンは、怪獣を倒すと空へ飛び立つ。が、そのままウルトラの星へ帰るわけでない。どこかで変身を解いてハヤタに戻り、科学特捜隊の仲間のところに戻ってくるのだ。
なぜ、戦いの現場でハヤタに戻らないのだろうか? 最大の理由は、自分がウルトラマンだとバレないようにするためと思われる。

なぜバレたらいけないのかはナゾだが、その必要があるのなら、ウルトラマンが空の彼方に飛び去り、人目につかないところで変身を解くのは賢明な選択だ。ただし、次のような悩ましい問題が生まれる。

多くの場合、科学特捜隊は感謝を込めて、飛び去るウルトラマンを見送っている。この状況で変身を解くわけにはいかない。ウルトラマンの肩幅は11mほどと推定されるが、この大きさの物体が視力1.0の人に見えなくなるのは、38㎞彼方まで飛んだとき。現場が新宿だったら、鎌倉あたりまで飛んでから、変身を解除する必要があるわけだ。
その一方で、彼は一刻も早くハヤタ隊員に戻って、仲間のところに駆けつけなければならない。つまり、人目を忍ぶために38㎞離れた鎌倉まで行き、ダッシュで新宿に戻る。
ウルトラマンの飛行速度はマッハ5。時速6120㎞というモーレツな速さであり、鎌倉上空まで飛んでいくのに22秒しかかからないが、そんな遠くでハヤタに戻ってしまったら、帰りが大変である。
ハヤタがマラソン選手なみの時速20㎞で走れたとしても、現場に帰り着くまで1時間56分。JR横須賀線と湘南新宿ラインを乗り継いで帰ってきたとしても、最短1時間2分もかかる。科学特捜隊の仲間たちは、まだ現場にいるかなあ……。

すぐ近くで戻っていた!?

実際にウルトラマンは、どこで、どんなタイミングでハヤタに戻っているのだろうか。
第1話で、ウルトラマンは怪獣ベムラーを倒すと、空へ飛び去った。科学特捜隊のメンバーたちはハヤタの乗っていた特殊潜航艇S16号に駆けつけるが、ハヤタの姿はない。
捜索を続けていると、向こうからハヤタが駆けてくる。アラシ隊員が「お~い!」と声をかけると、ハヤタも「お~い!」。それは、ウルトラマンが飛び立ってから11.8秒後のことだった。
ここから考えると、ウルトラマンは、この11.8秒のあいだに遠くへ飛び去って、変身を解き、ハヤタは走って帰ってきたのだろう。では、それぞれに何秒ずつかけたのか。
ハヤタが時速20㎞で走るとしても、その速度はマッハ5=時速6120㎞の306分の1。ウルトラマンが飛んだ距離と、ハヤタが走った距離は同じはずだから、ハヤタが帰ってくるには、ウルトラマンの306倍の時間がかかる。つまりウルトラマンが飛んでいた時間は全体の307分の1、ハヤタが走っていた時間は307分の306だったことになる。
この場合のウルトラマンの飛行時間はわずか0.038秒ということになり、移動できる距離はたったの65m! モノスゴク近い!

web用ウルトラマンその後図A

いくらなんでも、これは変では……と悩みつつ問題のシーンを繰り返し観察するうちに、第12話で衝撃のシーンを発見した。
怪獣ドドンゴを倒し、空へ飛び立ったウルトラマンは、後ろを振り返って周囲を確認する素振りを見せると、両手をぴったり合わせる。すると、手のあいだから光のリングが放たれて、崖の上に。リングが多数に分かれてバネのような形になり、それが消えるとハヤタが現れたのだ。同じシーンが、第27話のゴモラ戦でも見られた。
――これこそ、ウルトラマンが変身を解くシーンであった。なんだ、ちゃんと描かれているではないか。

と喜んでしまったが、冷静に考えると、ウルトラマンの手から放たれた光から、ハヤタが現れるって、なんか変ではないか? 自分が出した光から、自分が出てくる……?
なんかアタマがクラクラするけど、まあ、このシステムなら、ハヤタは遠い距離を走って戻る必要はないわけだ。光のリングを現場のすぐ近くに届けるだけでいい。長年の謎が解けましたなあ。

ただし、ハヤタを降ろす場所は慎重に選ばなければならない。安全な場所か、その周囲に人がいないか。それを38㎞離れたところから見極めているのだろう。
ふ~む、ウルトラマンの変身解除は、やっぱりウルトラである。【了】

本文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか