web用『バトルフィーバーJ』タイトル画

1970年代の特撮番組にはオモシロイ話がいろいろあったが、今回紹介したいのは、悪の組織エゴスが企てた「東京を魚不足にする」作戦。これが描かれたのは、79年放送の『バトルフィーバーJ』第35話「腹ペコ大パニック」である。

この『バトルフィーバーJ』は、スーパー戦隊シリーズの第3弾で、筆者はこれが大好きだった。
メンバーはバトルジャパン、バトルコサック、バトルフランス、バトルケニア、ミスアメリカの5人。その第1話で、司令官は彼らに訓示を与える。
司令官「君たちはそれぞれ踊りの名手だ。踊りのテクニックを戦いに活かし、エゴスを倒すのだ」。これを各人、踊りながら拝聴していた。わははは~。

実に楽しいが、気になることがある。
メンバーが得意とする踊りとは、バトルジャパンが「カンフーダンス」、バトルフランスが「スパニッシュダンス」。国と踊りが合っていない! バトルケニアの「トロピカルダンス」に至っては、どんなダンスかわかりません!
などなど『バトルフィーバーJ』について語り始めると夜が明けてしまうので、とっとと魚不足問題に取り組みましょー。

◆それはどんな作戦か?

悪の秘密結社エゴスの作戦は次のような構想だった。
①ゴダイギョ怪人が東京近海で漁船を次々に襲い、漁師が海に出ないようにする。
②東名高速のトンネル内で大事故を起こし、関西方面からの魚の輸送を封じる。
③東京から魚が消えたのを見計らってスーパーを開店し、魚を高値で売る。
④さらに、世相評論家にパニックを煽らせる。

まことに用意周到な作戦である。でも、どっちかというと、悪の組織の世界征服作戦というより、悪徳商社の違法ビジネス戦略みたいですな。
実際、この作戦は大成功する。魚の販売を独占したエゴスがスーパーを開店すると、そこではサンマが1匹3千円、小アジが1500円、タイが5万円! それでも魚が食べられなくなる不安から、買う人が続出したのである。
それを見た八百屋さんが「うちも安い値段で売っている場合じゃない」と考え、キャベツ1個を千円に。こうして物価の高騰は他の品目にも波及し、世相評論家の煽りも効いて、買い占め売り惜しみが横行して、サンマは最終的に10万円になった!
番組放送時の79年は公務員の初任給が9万7500円の時代だから、それよりも高い。途轍もない金額だ。
うーむ。なんだかすごい話である。ヒーロー番組において、悪の作戦は失敗するのが常なのに、なぜエゴスの作戦は大成功を収めたのだろうか。

◆魚はホントに不足するか?

エゴスの作戦を実行した場合、現実的にどの程度の魚不足が起こるだろうか。
ここでは、築地中央卸売市場の「産地別取扱量(都道府県別の入荷量)」を元に考えよう。
東京には他にも中央卸売市場があるが、最大規模のこの市場について調べれば、各地で獲れた魚が、どんな割合で東京に流通しているか、おおよそ浮かび上がると思うからだ。

その際、次の仮定をしよう。
①コダイギョ怪人が漁を妨害したため、東京、千葉、神奈川の漁獲高がゼロになった。
②東名高速が破壊されたため、静岡、愛知、岐阜、富山から西の魚が一切入らなくなった。
③作戦の行われた時期は、サンマの取れる9~10月とする。

79年のデータは入手困難なので、2016年で代用すれば、その年の9~10月の築地卸売市場の取扱量は、合計6万9400t。
その産地を精査すると、①によるマイナス(東京近海の魚が獲れない)は2万2900t(33.0%)、②によるマイナス(関西方面からが入らない)は2万2600t(32.6%)と見られる。
その結果、築地市場に入ってくる魚(東日本からは入るはず)は、残る2万3900t(34.4%)になってしまう!
なんと3分の1に大激減。これだけ減っちゃったら、魚の価格は高騰するだろう。
現実的な数字の面から考えても、なかなかナットクできる作戦ではないか。すごいなー。

web用『バトルフィーバーJ』図A

にもかかわらず、エゴスのこの作戦が失敗してしまったのはなぜか?
それは、コダイギョ怪人が、釣りをしていたバトルフランスに釣り上げられ、バトルフィーバーと戦って負けちゃったからだ!
用意周到だった作戦が、遂行責任者が釣られて終わり。アタマが悪いにもホドがある。近年「魚に含まれているDHAがアタマをよくする」と言われているが、エゴスの人々はまず自分たちが魚をたくさん食べましょう。【了】

文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか