『バイラス星人の合体』タイトル画[1]

かつてゴジラと並ぶスター怪獣だったガメラ。
冷凍怪獣バルゴンとの戦いは、生物同士が組み撃つ生々しい迫力に溢れていたし、続くギャオスとの傷だらけの死闘には、本当にドキドキしながら見入ったものである。

ところが、対戦シリーズ第3弾の『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』で、なんだか雰囲気が一変した。
ガメラとバイラスは激しい戦いを展開し、バイラスの尖った頭部がガメラの腹を刺し貫いてしまうなど、びっくり度合いにおいては、バルゴンやギャオスとの戦いをも凌駕していた。
でも、なんだか怪しいのだ。「いくらガメラでも、串刺しになったら死んでしまう!」と思っているのは観客だけで、劇中の人々はあっけらかんとしている。ガメラも、もちろん元気だし。

子ども心に「不思議な映画だなあ」と思っていたのだが、大人になって事情を知り、深々とナットクした。これが公開された1968年頃、映画業界の斜陽化が一気に進み、制作の現場は大変なことになっていたらしい。
前年の『大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス』と比べると、予算は何と3分の1! おカネをかけずに迫力を出すためには「突く、刺す、切る」戦いをやるしかなかったとか……。
うーむ、そうだったのか。そんなに逼迫していたとは知らず、文句を言いながら見てしまって、悪かったなあ。

というわけで、いまとなっては優しい目線で見てしまう『バイラス』なのだが、それでも忘れられないのは、バイラス星人の合体だ。
ガメラが出現すると、それまで人間とそんなに大きさの変わらなかったバイラス星人たちが合体を始め、見る見るうちに巨大化したのである。
怪獣図鑑などによれば、最終的には、身長96m、体重120t! ガメラが60m、80tという設定だったから、身長は1.6倍、体重も1.5倍にまで急増したことになる。
しかし冷静に考えると、これは人間サイズのバイラス星人が相似拡大しただけ。それって、何かいいコトがあるのかな?

6人で96mになる理由

普通に考えれば、96mの巨大バイラスを生み出すためには、かなり大勢のバイラス星人が必要なはずである。合体前のバイラス星人たちは、身長が3mほどだった。これが集まって96mになったのだから、拡大率は32倍。すると、蝟集すべきバイラス星人の数はその3乗で、なんと3万2768人!
恐るべき大軍勢である。しかも、バイラス星人は知能指数が2500もあるという。そんなに頭のいい宇宙人が3万3千人もいるなら、たとえば3万3千の戦闘機に分乗して攻撃すれば、ガメラにもたちまち勝てそうな気がする。相手はカメだし。

だが、これは計算上の話。実際に『バイラス』劇中の合体シーンを見てみると、ギョギョッ! 合体前の人数は、たったの6人しかいない!
3mのバイラス星人が6人合体して、なぜ96mにまで巨大化できるんだ!?

あまりの不思議に、手元の怪獣図鑑をいろいろ調べてみたところ、『怪獣怪人大全集 ガメラ大魔神』(ケイブンシャ)という本に、驚くべき記述を発見した。合体のシーンに「バイラス星人は見る間に2倍4倍8倍……32倍」と書いてあり、そこには5段階で巨大化していく写真もついている!

な~るほど。1人増えるごとに、身長が2倍になるわけか。
2人が合体して6m、3人で12m、4人で24m、5人で48m、6人で96m! おお、計算もピッタリ合う。
これは高校2年の数学で習う「指数関数」というヤツであり、こんなものを応用するとは、さすが知能指数2500の宇宙人!

感心している場合ではない。
これが本当なら、恐ろしいことになる。もう1人合体に加われば、身長は192m。この時点で、身長60mのガメラには圧勝できるのではないか?
さらにもう1人で384mとなり、東京タワーを超える。12人集まれば6144mとなって富士山を見下ろし、28人が合体すれば40万㎞にもなって月まで届いてしまい、そして88人が合体すると、その身長は490億光年! なんと宇宙の直径を超えてしまうのだ!

バイラス星人 図解 変更

 

だいたいこの合体は、質量保存の法則を完全に無視しているではないか。
身長が32倍になれば、前述したように3万2768人分の体重になるはずだが、その元になったのは、たったの6人?
なぜこんなワケのわからない合体を……と書きかけて、ハッと気がついた。
予算が、なかったのだ。本当なら3万2768人のバイラス星人を合体させたかったが、予算の都合で6人しか登場させられなかった。この少ない陣容で身長96mに巨大化するには、指数関数を応用するしかなかったのに違いない。う~む、そうか~。
などと、台所事情を理解して、この問題をナットクしちゃっていいのかな?

尻として生きていく!

それにしても、6人が融合して1人になるとは、限りなく不気味な現象である。こんなコトをして、バイラス星人たちは大丈夫だったのだろうか。
合体する生物は、自然界にも存在する。クラミドモナスという単細胞生物は、生活環境が快適なときはバラバラに活動するが、条件が悪くなると寄り集まって、パンドリナという多細胞形態になる。

これに学ぶと、合体したバイラス星人の気持ちもヒシヒシと伝わってくるではないか。ガメラ出現という環境の激変に、本能的に寄り集まってしまったのだろう。

ただし、バイラス星人は最初から多細胞生物と思われる。それが合体するというのは、どういうことなのか。たとえば、6人の脳だけが集まって巨大な脳に、腸だけが蝟集して巨大な腸になるということ?
その場合、1つの脳に6人分の意識が混在しないのだろうか。しかも、1つ1つの知能指数が2500なのだ。これが6つ集まって、さらに頭がよくなれば幸いだけれど、全員が自分の考えに自信を持っていて、何かするたびに、あーでもないこーでもないとモメたりしそうだなあ。

そうではなく、一度すべて集まった後、細胞自体が変化して、あるバイラス星人は頭に、別のバイラス星人は足や尻になる……という考え方もできる。しかし、その場合もやはりモメると思う。
彼らの立場になってもらいたい。あなたなら脳と尻、どっちになりたいですか?
無理やり尻にされてしまったバイラス星人のことを思うと、筆者は胸が痛む。さっきまで知能指数2500を誇っていたのに、知識も思考力も淡い思いも捨て去って、これからは一介の尻として生きていかねばならんとは……。

複数が一つにまとまるというのは、大変なことである。世の中を見ても、出版社一つ合併するのにも、てんやわんやの大騒ぎではないか。合併は慎重に。【了】