web用タケコプタータイトル画

ドローン、すっかり浸透してきましたなあ。カメラを搭載して自在に飛び回り、驚くような映像を撮影してくれるし、荷物の配達などにも使われ始めている。
その躍進ぶりを見聞きするたびに、どうしても思い出すのが『ドラえもん』のタケコプターである。小さなプロペラを頭につけて、気軽に空を飛ぶ。数あるドラえもんのひみつ道具のなかでも、いちばんポピュラーで便利そうなアイテムだ。
にもかかわらず、実際にタケコプターが開発されたという話は聞かない。ドローンにも勝る画期的な道具だと思うのだが、なぜ誰も作ろうとしないのだろう? タケコプターには、何か問題があるのだろうか。

タケコプターの欠陥とは?

その名称から、タケコプターは「竹トンボ+ヘリコプター」をイメージしているのだと思われる。
タケコプターとヘリコプターの明らかな違いは、プロペラの大きさだ。
ヘリコプターには、機体よりずっと大きなローターがついている。これに対してタケコプターのプロペラはドラえもんの頭より小さく、直径が20㎝ほどしかない。
これにより、科学的に重大な問題が発生する。せっかくプロペラが起こした風が、自分の頭を直撃するのだ!
ドラえもんは頭の周囲が129.3㎝だから、直径は41㎝となる。タケコプターの推定直径20㎝に対して、頭が倍も大きいため、プロペラが起こした風のほとんどは頭を直撃して、頭部を下向きに押しつける。

その一方で、頭頂部だけは、上昇しようとするタケコプターに持ち上げられる。
つまりドラえもんの頭は、押し下げる力と、持ち上げる力、矛盾する2つの力を受けるのだ。
これはキツイ! てっぺんだけを引っ張られたドラえもんの頭は、むにょーんと水滴のような形に変形するだろう。場合によっては、ドラえもんの頭にはヒビが入り、やがてバリバリッと頭皮がはがれ、タケコプターといっしょに飛んでいくかもしれない。想像すると、実にオソロシイ……。

web用タケコプター図B

たくさんつければ何とかなる?

マンガに出てくるタケコプターそのままで飛ぶのは難しそうだが、実現する方法はないのだろうか。

頭に風が当たるのが問題なのだから、これを避けるには、ヘリコプターのようにプロペラを大きくすればよい。プロペラは外側ほど速く動き、強い風を起こすからだ。
では、どれほど大きいプロペラなら飛べるのか。プロペラは、先端の速度が音速に近づくと、持ち上げる力が弱くなってしまうから、ここでは「先端の速度が音速の90%」と考えよう。これでドラえもんの体重129.3㎏を支えるのに必要なプロペラの直径は、なんと2m。回転を始めると、ビーチパラソルのように見えるんじゃないか。

そして、タケコプターにはもう一つ問題がある。頭にプロペラをつけて回すと、作用・反作用の法則により、自分も逆回転してしまうのだ。しかも回転の勢いは、プロペラが大きくなるほど速くなる。
直径2mのプロペラの重さを2㎏と仮定すると、体重129.3㎏のドラえもんの回転数は、プロペラの10分の1になる。そして、このプロペラの先端を音速の90%で回すとき、回転数は毎秒49回転。つまり、ドラえもんがこれを頭につけると、その反作用で、自分は1秒間に4.9回も逆回転する! これはツラい。

この問題を解決するために、ドローンにならって、複数のタケコプターをつけることにしよう。数が多ければ、大きさも20㎝のままで構わないはずであり、一石二鳥だ。
ただし、直径20㎝のプロペラ1個で支えられる重量は、わずか1.2㎏。ドラえもんの体重129.3㎏を浮かせるためには、タケコプターを108個も設置しなければならない!
これほどの数となると、頭だけではとても無理で、全身につけるしかないだろう。腹ばいになって両手両足、背中、尻にもつけても足りるかどうか……。

しかし作品中のドラえもんは、たった1本の小さなタケコプターで、のんびり空を飛んでいる。うーん、確かにタケコプターにはそうあってほしいが、いったいどうなっているのかなあ。22世紀の科学には、驚くばかりだ。【了】

修正済web用タケコプター図C