ウルトラマン3分間タイトル

「ウルトラマンは3分間しか戦えない」というのは有名な弱点である。
M78星雲・光の国からやってきたウルトラマンは、太陽エネルギーで活動する。だが、太陽エネルギーは地球上では急激に消耗するのだという。それを使い果たす時間が3分で、これを過ぎるとウルトラマンは二度と立ち上がれなくなる!

この時間制限、あまりにも短くないだろうか。
ボクシングも1ラウンド3分だが、最初のラウンドで決着がつくことは稀だ。しかしウルトラマンは、それと同じ時間で怪獣を倒さなければならない!

しかも、彼の使命は「地球の平和」を守ることだ。地球は周囲4万㎞、総面積5億㎢。まことに広大である。これをたった1人で、しかもたった3分で守り抜くことなどできるのだろうか?

ウルトラマンの行動半径は?

地球の平和を荒らす怪獣は、いつどこに出現するか予測できない。ウルトラマンは相当の広範囲にわたって活動する必要があるが、彼の行動範囲は具体的にどのくらいなのか?
怪獣図鑑によれば、ウルトラマンはマッハ5で空を飛び、時速450㎞で走る。また、200ノットで泳ぐこともできるという。

まず、泳ぐ速さの200ノットに注目したい。ノットは船や飛行機の速さを表す単位で、1ノットは時速1.85㎞だ。すると200ノットは時速370㎞。人間など及びもつかない優れた泳力である。

しかし、与えられた時間はたったの3分。この時間にどれだけ泳げるかというと……げっ、わずか19㎞!
東京湾から飛び込んで猛然と泳ぎ始めたウルトラマンは、悲しいことに横浜沖に達しないうちに力尽きてしまうのだ。

ウルトラマン三分間図A

走力はどうだろうか。時速450㎞は確かに速い。時速320㎞を誇る東北新幹線はやぶさにも圧勝する速度だ。
だが、3分間で走れる距離は、たったの22.5㎞。
ウルトラマンがはやぶさと競争し、同時に上野駅から北へ向かうと、スタート直後はウルトラマンがリードするが、最初の停車駅・大宮の5.2㎞手前で3分経ってしまってハヤタに戻り、ヘタバっているところを、はやぶさ号が軽やかに抜き去ることになる。
このヒーロー、速いことは速いが、著しくスタミナに欠けるのだ。

新宿から国分寺までの21.1㎞を、JR中央線がほぼ直線状に走っている。
2017年現在、乗車賃は388円。地面の上を移動する限り、だいたいこのあたりが彼の行動半径ということになる。人間なら充分に通勤通学圏内。なんとウルトラマンの活動範囲は、サラリーマンや学生よりも狭かった!

ウルトラマンは大阪を守れない!

ウルトラマンの移動手段といえば、やはり空を飛ぶことだ。これを抜きに、彼の行動範囲は語るべきではないだろう。

その速度はマッハ5。これは半端なスピードではない。音の速さは気温によって変化するが、地表の平均気温である摂氏15℃のとき、秒速1700m。実に時速6120㎞である。やはりウルトラマンはすごい。
では、科学特捜隊の基地から出発して西に向かった場合、3分間でどこまで飛べるのだろうか。
科特隊の日本支部は「東京郊外」にあるという設定で、具体的な地名は明らかではない。そこで、東京の西部にある調布市だと仮定して、そこからマッハ5で飛び立ったウルトラマンが、3分間でどこまで行けるかを計算してみると……。
えっ。琵琶湖!?

これには筆者も驚いた。マッハ5という猛烈なスピードで飛んでも、たったの3分では300㎞しか移動できないのである。ウルトラマンは琵琶湖の上空で変身が解けてハヤタに戻り、そのまま日本最大の湖にボチャンと落下……。

他の方角はどうか。
北へ向かえば仙台、北西に針路を取れば金沢が限界である。なんとウルトラマンは、地球の平和を守るといいながら、大阪や盛岡さえ守れない!

ウルトラマン三分間図B

守備圏内にある名古屋にしても、調布から245㎞も離れているため、移動するだけで2分24秒を使ってしまう。
すると、戦えるのはたったの36秒。これはもう、地上に降り立つなり、いきなり必殺・スペシウム光線をしゅばばば~と浴びせるしかない。暴れていた怪獣も「そんなのアリ!?」と文句を言いたくなるだろう。

半径300㎞というのは、面積にして地球全体の0.06%にすぎない。
残る99・94%の地域に暮らす皆さん。怪獣が現れたって、ウルトラマンは決して来てくれませんぞ~!【了】

文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか