十四松タイトル

『おそ松さん』の六つ子はみんな個性的だけど、なかでもインパクト大なのは、十四松だ。
「兄弟のなかでも、ズバ抜けて明るく野球好き」といえば、とても健全なヒトのように思えるが、そういうレベルは超越している。もう人間かどうか、疑わしいよね。
ここでは、十四松の行為のなかでもとくに印象的な2つを見てみよう。すなわち「顔で水芸」と「分裂」。これらについては「どうなっているのでしょう!?」という質問が、ホントにたくさん寄せられるのだ。

毎秒7Lの水を噴く

ヒジョ~に気になるのが、十四松の「水芸」である。

十四松は、鼻と耳と頭頂の5ヵ所から、水をぴゅ~っと噴水のように噴き出す。どうやって出しているのか、さんざん考えたけど、うーん、わからん……。
たとえば普通の人間が流す「涙」は血液から作られる。涙腺のなかの毛細血管から、水分だけがにじみ出てくるのだ。同じような機構が、十四松の鼻や耳や頭頂部にあれば……とも思うが、そういう不可思議なことになっていたとしても、問題がある。それは、噴射する水の量。

劇中の描写から、頭頂からの噴出量を測定してみよう。
十四松の顔と比べると、水は20㎝ほど上昇しており、ここから水は秒速2mで噴射されていることがわかる。その水柱の直径は3㎝くらいだろう。
すると、頭頂だけで毎秒1.4Lの水が噴き上がっていることになる。鼻と耳からの噴射量も同じだとすると、なんと毎秒7L!

人間が、体からこんなに大量の水を排出して大丈夫なのだろうか。

アニメ第一期の♯9B『恋する十四松』では、女の子とデートしたとき、5回連続で18.2秒にわたって水を噴き出した。
十四松は直前にコップ1杯の水を飲んではいたものの、噴出した水の総量を計算すると、実に127Lだ。重さにして127㎏であり、明らかに十四松の体重を超えている!
死なないのか? これでも死なないのか、十四松!?

何人に分裂したのだろう?

分裂したのは、♯14『風邪ひいた』において。
六つ子が風邪をひき、治った者が他の5人を看病してはぶり返し、寝込むのを繰り返す。
最後に治った十四松は「おりゃあ! おりゃあ! さあ行くぞ! さあ行くぞ! さあ行くぞ! 分裂ーっ!」と叫ぶや、空中で後方回転して3人に分裂した! 再び後方回転して9人に分裂!
これを繰り返してだんだん小さくなり、最後は無数の微小な十四松が5人の体に入り、ウイルスを殴る蹴るして、全員を全快させたのだった。

なぜこんなことができるのか、もうまったく全然わかりません。そこで原理を考えるのはあきらめて、十四松がどれほどの大きさに、そして何人になったのかを考えよう。

十四松が蹴っていたウイルスに、球形をしたものがあった。これはおそらく風邪のウイルスとして最もポピュラーなアデノウイルス。直径は10万分の8㎜だ。
微小化した十四松の身長は、その4倍くらいだった。電子顕微鏡でやっと見える大きさで、普段の十四松の身長を170㎝とすると、530万分の1に縮小したことになる。
すると体重は「530万分の1」の3乗で、1垓5千京分の1になったと思われる。十四松にも「質量保存の法則」が有効だとしたら(人間である以上、有効であってほしい)、人数は1垓5千京人になったはずである。
これ、算用数字で書けば150000000000000000000人!

こんな大軍勢に分裂するには、気の遠くなる回数がかかるのでは……と思うけど、3倍を43回繰り返すと、3垓3千京倍になる。つまり十四松は、たった43回分裂すれば、そこまでに増えるのだ。

十四松図解

こうして、5人の体に3千京人ずつの十四松が入ったと思われる。しかし、これでウイルスに勝てるのだろうか?
風邪を引いたとき、ウイルスが体内で何個ぐらいに増殖するか、筆者にはその知識がないのだが、確実にいえることがある。
十四松の普段の体重を65㎏とすると、1人の体に入った3千京人の十四松の総体重は、13㎏にもなる。ウイルスがそんな重量にまで増殖するはずはないから、これは間違いなく十四松軍団の圧勝だろう。はい、治りました。ばんざーい! ばんざーい!

本当にすごい男だ、松野十四松!
しかし、考えれば考えるほど、やっぱり人間ではないような気がしてきますなあ。【了】

文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか