web用『サンタ』タイトル画

クリスマス・イブの夜、サンタクロースが世界中の子どもたちにプレゼントを配る。すばらしいことだが、実践するサンタクロースの身になってみると大変な仕事だ。
真冬の夜、トナカイが牽引する吹きッさらしのソリに乗り込んで、子どものいる家を一軒一軒まわる。しかも、赤い服と赤い帽子に白いひげ、袋を担ぎ、煙突からそっと入って、靴下のなかにプレゼントを入れる――など、様式も細かく定まっている。
これを滞りなく毎年毎年続けているサンタクロースは、あまりに偉大である。彼に敬意を表しつつ、その仕事っぷりを科学的に見てみよう。

プレゼント代は1兆8千億円!

そもそも世界には子どもが何人いるのだろうか。
総務省統計局のデータには、2010年の世界人口は69億2972万5千人とある。ここで14歳までを「プレゼントがもらえる子ども」と仮定すれば、地球全人口に占めるその割合は26.7%。つまり18億4917万人となる。

う~む、なかなかすごい人数だ。話を簡単にするために、ここからは配るべき人数を18億人と考えることにしよう。
サンタクロースはまず、18億個のプレゼントを用意せねばならない。プレゼントの値段を1個千円とすると、総費用はなんと1兆8千億円である!
しかも18億個となると、モノスゴクかさばる。1個のプレゼントが一辺20㎝の立方体に入っているとすれば、ピラミッド状に積み上げたとき、プレゼントの山は一辺350m、高さも350m。世界最大のクフ王の大ピラミッド(一辺230m、高さ139m)をはるかに凌駕する。

web用『サンタ』図A

どうやって配るのか?

これほど大量のプレゼントを、サンタクロースはどうやって配るのだろうか。
彼に与えられた時間は一晩。できるだけ仕事を早く始めたいところだが、さすがに午後10時ぐらいまでは、13~14歳といった年長の子どもたちが起きているだろう。また、朝もあまり遅いと、待ちかねた子どもたちが起き出してくる。よって、サンタクロースは12月24日の午後10時から25日の午前5時まで活動すると考えよう。

単純計算すると、使える時間は7時間だ。しかし、地球各地には時差があるから、西へ西へと進んでいけば、時刻を遡ることができる。日付変更線のすぐ西、キリバス共和国のライン諸島が24日の午後10時を迎えるとき、日付変更線の東にあるサモア独立国は23日の午後9時。そのサモアが25日の午前5時を迎えるのは、32時間後のことである。
サンタクロースは、地球を西へ西へと進みながら、32時間かけてプレゼントを配ればよいことになる。

いやいや、何が「配ればよい」だ。配るべき相手は18億もいるのである。
世界の陸地の面積は1億5千万㎢。砂漠や森林、農地や工業用地を除く総面積の5%に人家が広がっているとし、子どものいる家に14歳以下の子どもが平均2人いるとしたら、訪ねるべき家は9億軒。これらが前述の面積に均等に散らばっているとすると、家々の平均間隔は81mとなる。すると、トナカイが走る総延長距離は7300万km。これを32時間で走破するスピードとはマッハ1900だ! わははははっ、もう笑うしかないっ。

こうなるともう、一軒一軒の家に入るなど悠長なことはしていられない。ソリに乗ったまま、子どもたちの寝室の窓に向かってプレゼントをビュンビュン投げるしかないだろう。
しかし、そんなことをしたら大変だ。マッハ1900で高速移動中のサンタクロースが投げたプレゼントは、当然マッハ1900で子どもの寝ている家のガラスを突き破り、部屋の壁や床に激突! プレゼントの重量が500gなら1個当たり爆薬24t分の破壊力となって、家がどばーんと大爆発!
犠牲者多数、街は騒然、庶民が心待ちにしていたクリスマスは阿鼻叫喚の地獄絵と化す……。

大人数で配るとしたら?

大変な話になってきた。
一夜にして世界じゅうの子どもにプレゼントを配るという難事業を、1人でやろうとするからいかんのだ。多くの絵本で語られているように、サンタクロースは何人もいると考えてはどうだろうか。

サンタクロースと似た仕事に宅配便がある。そこで集配の方に話を伺ったところ、忙しい時期には1日に10時間ほど配達するが、それでも100個+αが限界だという。そこで、同じように1時間に10軒ずつ訪れ、平均2人の子どもにプレゼントを渡すと考えよう。時差が使えないので、活動時間は10時から5時の7時間。労働時間としても穏当だ。

この丁寧な作業に必要なサンタクロースの人数を計算してみると、おおっ、なんと1300万人! そのうち何人がわが国にいるのだろうか。人口比から計算すると、日本のサンタクロースは12万1千人。なんと、国民の千人強に1人がサンタクロース!

地域別に見ると、人口の最も多い東京都には、1万2500人のサンタクロースがいるはずだ。収容人数1万3千人の武道館をフルハウスにする大軍勢である。人口最少の鳥取県でも560人。こちらは、収容人数2千人の鳥取県民文化会館にはちょっと寂しい。

web用『サンタ』図B

収容人数4万5600人の東京ドームが満員になれば、手に汗握るサンタクロースは43人。1日に361万人が乗降する新宿駅では、毎朝1720人のサンタクロースが人波にもまれている! いや~、世の中サンタクロースだらけですなあ。

――うーむ。サンタクロースの「世界中の子どもに一晩でプレゼントを配る」を科学的に考えると、これほどすごい大事業だったのである。【了】