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1971年に放送された『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」は、子ども向けの番組ながら、差別・偏見・集団心理という人間の醜い部分に光を当てた異色のエピソードだ。2016年NHK「あなたが選んだウルトラマン・シリーズ」人気投票でも、堂々第2位を獲得している。
そしてこの話は、法律的にとても興味深い。

河川敷に建つ廃墟に一人で暮らす少年。
彼はときどき超能力を使うことから「宇宙人」と呼ばれ、不良たちにいじめられていた。「少年が宇宙人だ」という噂は、やがて町中に広まっていく。

MATの郷隊員が調査した結果、少年は宇宙人ではなかった。
少年は、地球に来て死にかけているメイツ星人を廃墟にかくまっていたのだ。少年が不良たちに見せた超能力は、実はメイツ星人が少年を守るために使った念動力だった。

ある日、暴徒と化した町の人々が警察官と共に、宇宙人の少年を退治しようと河原に押し寄せてくる。見かねたメイツ星人が「宇宙人は私だ」名乗り出ると、人々はパニックに。その混乱の中、2人の警察官の発砲。メイツ星人は死んでしまう。すると、メイツ星人の念動力で封じ込められていた怪獣ムルチが出現。

物語はこの後、ウルトラマンVS怪獣ムルチへと展開していくのだが、ここで素朴な疑問が一つ生まれる。
警官は、メイツ星人を射殺した。このとき、メイツ星人は暴れていたわけではない。そんな場合でも、相手が宇宙人だったら、警察官は問答無用に射殺していいのだろうか?

なぜ人を殺してはいけないか?

そもそも、人はなぜ、人を殺してはいけないのか。

かわいそうだから。人の道に反しているから。自分も殺されたくないから……。「人を殺してはいけない理由」は、さまざまな観点から考えられる。
だが、法律の観点からいえば、「憲法が国民に保障している生命に対する権利を奪うから」ということになる。

日本国憲法は、国家のあらゆる法律や規則の根幹となる最高規範だ。
憲法11条では、すべての国民に対して、憲法が保障する基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として保障し、また13条で、この基本的人権として「生命、財産及び幸福追求に対する国民の権利」を認めている。
刑法(199条)が「殺人」を「罪」と規定しているのは、刑法より上位の法である憲法で、生命を「侵すことのできない権利」として国民に保障しているからだ。

しかし、基本的人権は、日本国がその「国民」に対して認めている権利である。
では、「外国人」に対しては?
憲法に明確な規定はないが、日本の最高裁判所は「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」として、入国の自由や参政権等の例外を除き、外国人にも認められると考えている。

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宇宙人がやってきたら?

では、メイツ星人のような宇宙人に対してはどうだろう。実際にそういう宇宙人がやってきた場合、基本的人権は認められるのか?

現状の法律をストレートに解釈すれば、「認められる」とは言い切れないだろう。
日本の国民でもないし、そもそもヒトつまり「ホモ・サピエンス」でなく、外国人でもないからである。
したがって、メイツ星人を射殺した警察官2名が「殺人罪」に問われることもないはずだ。

では、警察官は何の罪にも問われないのか?
メイツ星人は、人間ではないが、生き物である。そこで、動物と考えたらどうだろう。
ペットなどを殺すと、人の所有する動物を殺し「損壊」「傷害」したということで「器物損壊罪」(刑法261条)が適用される。だが、メイツ星人は誰かの所有するペットでもない。
また、人がかわいがって大事にする「愛護動物」を殺した場合、「動物愛護法」が適用され、刑事罰が科される。しかし「愛護動物」は、牛、馬等というように具体的に決められており(同法44条4項)、メイツ星人はこれにあたらない。結局、この法律でも処罰されない。

しかし、地球に飛来するほど高い知能を持つ宇宙人を守る法律がないというのはいかがなものか。
メイツ星人は、人類に近い身体的な特徴を持ち、人間と言語で意思の疎通ができ、少年に対して親愛の情を示した。彼にも、在留外国人と同じ人権を認めるべきだろう。
少なくとも、「宇宙人は私だ」と名乗り出ただけで警察官に射殺されるようなことはあってはならない。それがまかり通ってしまうようなら、ウルトラマンだっていつ人間に襲われるかわからず、おちおち地球の平和も守れなくなる。

映画やマンガにはしばしば宇宙人が登場し、人間と交流を持つが、実際にそういうことが起こったら、法の整備も急がなければならないのだ。【了】

盛田栄一/弁護士・片岡朋行(ヴァスコ・ダ・ガマ法律会計事務所)