ツインテールタイトル

1971年に放送された『帰ってきたウルトラマン』の第5・6話に、ツインテールという怪獣が登場した。
地面に顎をつけ、尻尾をシャチホコのように上げて歩く斬新な怪獣だが、それにも増して印象的だったのは、多くの怪獣図鑑に載っていたこんな記述だ。
「生まれたてのツインテールは、エビのような味でとてもおいしく、グドンの大好物だ」
怪獣がエビの味!?
当時は怪獣ブームの真っただ中で、ゴジラや初代ウルトラマンから数えると100匹を超える怪獣が登場していたが、味について書いてあるの見たのは初めてだった。

味が判明しているということは、誰かが食ってみたはずだ。
しかも、エビの味がするのは「生まれたて」に限ることまで明記されているのだから、その人は成熟したツインテールにもかぶりついたに違いない。ツインテールは身長が45mもある大怪獣なのに。
筆者はその人物を心から尊敬する。

話をややこしくするウルトラマン!

ツインテールが登場した物語は、こういう内容だった。
西新宿の工事現場(現在の新宿新都心)で発見された卵から、怪獣ツインテールが孵化し、暴れ始める。次いでグドンも出現し、2大怪獣は激しく戦う。
正義のチーム・MATが文献を調べると「グドンはツインテールを常食する」という記述が見つかった。
なんと、この戦いは単なる怪獣同士のケンカではなく、グドンによる「狩り」にツインテールが必死で抵抗しているシーンだったのだ!

生物同士の「食う・食われる」の関係を食物連鎖という。怪獣も生物である以上、食物連鎖の輪のなかにいて当然だ。それを正面から描くとはまことに科学的な番組である。
感心しながら見ていると、えっ!?と驚くシーンが現出した。
グドンとツインテールが戦っているところに、ウルトラマンが登場。両者の戦いに加わったのだ。
なんてことするんだ、ウルトラマン!
それは、ライオンがシマウマを襲っているとことに、割って入るようなもの。そんなことをしたら、グドンは妙な野郎が餌を横取りしにきたと怒るだろうし、ツインテールも敵が2匹に増えてしまったと焦るだろう。
と思っていたら、案の定ウルトラマンは2匹に攻撃されて大ピンチに。当然の結果だと思います~。

ツインテール図解1

幸い、グドンがツインテールを倒し、敵が1匹になったおかげで、ウルトラマンは何とか勝つことができた。
しかし、両者は、食う・食われるの関係にあるのだから、放っておいても、いずれは1匹になるのである。そうなってから出ていけば、満腹で闘争心も鈍ったグドンだけを相手にラクな戦いができたはず……。
ウルトラマンは、どう考えても出ていくのが早すぎたのだ!

グドンを1匹見かけたら……

では、ウルトラマンが邪魔しなかったら、両者のあいだにはどんな食物連鎖が成り立っていたのだろう?
問題の焦点は、食われるほうのツインテールの数である。
1匹の動物が、一生のうちに1匹の餌しか食べないことはありえないから、食われるほうは食うほうより圧倒的に多くなければならない。
1匹のグドンがいるとき、ツインテールは何匹いるのだろうか?

グドンの体重は2万5千t。ライオンの食事量から計算すると、1日にグドンが食べるツインテールの肉は52tになる。
ツインテールの体重は1万5千tだから、単純に計算すれば、ツインテール1頭はグドンの290日分の餌となるわけだ。

だが、ここで重要なことを思い出そう。そう、ツインテールはエビの味!
ということは、その体を作るタンパク質も、エビと同じように腐りやすいと考えられる。
賞味期限はせいぜい3日くらいか!?
グドンは、ツインテールを倒したら、新鮮なうちに食い溜めする必要がある。再びライオンのデータから計算すると、グドンが賞味期限3日のうちに食い溜めできるツインテールの肉は、最大で77日分となる。

一方、これもライオンから計算すると、体重1万5千tの動物は、生殖可能になるまで53年を要すると見られる。
すると、77日に1匹のペースで食われても絶滅しないためには、最低でも250匹のツインテールが必要になる。
つまり、グドン1匹を見かけたら、250匹のツインテールがいることを覚悟せねばならない、ということだ。うっひょ~っ。

ツインテール図解2

ツインテールは何を食べる?

これだけの数となると、心配である。
食われる側のツインテールも、何かを食べているはずだ。いったい、何を食べるのか。
ツインテールは、尾を振り上げ、アゴで地面を這い回る。その口の大きさは、上下1・5mほどだ。口にはワニのような鋭い歯が並んでいるから、明らかに肉食動物である。
すると、この怪獣が捕食するのは、地上で生活する体高1・5mほどの動物……。
えっ、まさか、人間!?
なんと、グドンとツインテールの食物連鎖を他人事のように分析してきたが、その食物連鎖において、われわれ人間はツインテールの下に位置していたというコト!?

これは認識を改めなければ。われわれは食物連鎖というと、なんとなく食べられる側がカワイソウ、という気持ちになる。
だが、そのまた下に人間がいるとなれば、話は逆だ。
人間にとってグドンは、害獣・ツインテールを食べてくれる大益獣。ぜひ盛大にツインテールを召し上がってください。
ウルトラマンも、グドンの邪魔をするなど言語道断。ツインテールを捕まえてきてグドンにプレゼントするなど、せっせと働いていただきたい。
なのにウルトラマンは、大自然が使わした人類の守り神・グドン様を倒してしまった。なんてコトしてくれたんだ、ウルトラマン!

ツインテール図解3

しかも、劇中でグドンが倒したツインテールは、250匹いると考えられるうち、たったの1匹である。
グドン亡きいま、ツインテールはドンドン増える。そうなると、人間はドンドン食われる……。
うわ~っ。この物語、その後どうなったんだろうなあ?
描かれなかった「その後」が気になって仕方がない『帰ってきたウルトラマン』の第5・6話である。【了】

イラスト:近藤ゆたか