タロウタイトル

ウルトラマンタロウの必殺技・ウルトラダイナマイトをご存じだろうか。
自分の体を爆弾化して、怪獣とともに爆発するという豪快なワザだ。あまりに危険な技のため、使うとタロウの寿命を縮めてしまうという。

えっ、死なないの? 縮めるだけ? と驚かれる読者もおられようが、ウルトラの戦士はそのくらいでは死にません。しかもこのヒト、ウルトラの父の嫡男だし。

しかし、科学的に考えれば、不可解な技である。
体を爆発させちゃって、なぜ大丈夫なのか? いったいどれほど威力のあるワザなのか? 
本項では、ウルトラダイナマイトについて考えよう。

◆相手は目つぶし星人!

ウルトラマンタロウの体重は5万5千t。もし、そのすべてが本当に爆薬と化して炸裂したら、威力は絶大だ。
広島に落とされた原子爆弾の威力は、爆薬約1万5千t分。エネルギーの半分が爆風となって、半径21㎞の領域を破壊した。
爆風は爆心からドーム状に広がるから、被災半径はエネルギーの平方根に比例すると考えられる。すると、ウルトラダイナマイトが炸裂したら、爆風は半径5.4㎞まで広がるはず。東京の四谷あたりで爆発した場合、山手線の内側が灰燼に帰してしまうのだ。

でも劇中では、それほどすさまじい被害は出なかったような気がするが……。
残念ながら、ほとんど記憶にないので、ウルトラダイナマイトが使われている回の映像を確認してみよう。

それは『ウルトラマンタロウ』第35話。
勇壮な主題歌にワクワクしながら本編開始を待っていると、歌の終わりに、登場する怪獣の名前が示される。それを見て愕然。「目つぶし星人カタン登場」!
目つぶし星人!? そんな情けないヤツを倒すのに、タロウは命懸けの荒技を出したのか?
だいたい、目つぶし星人と名乗るからには、生まれた星は「目つぶし星」。宇宙旅行はしてみたいけど、そんな星には断固行きたくない! 
ついでに次の回を見たら「猫舌星人グロスト登場」。宇宙はいったいどうなってるんだ!?

そんなことを気にしている場合ではない。必殺技が炸裂する場面に注目しよう。
その名に恥じず、タロウの視力を奪う目つぶし星人。ZATの朝比奈隊長はとっさに叫ぶ。
「よし、ベル作戦だ!」。
いったいどんな作戦かと思ったら、ZATの戦闘機・スカイホエールが巨大な鈴を発射し、目つぶし星人の首に巻きつける。以後タロウは鈴の音を頼りに戦うのだった……。
テンションが高いんだが低いんだか、判然としない戦いである。こういう流れのなかに、空前の危険な技を繰り出す機会が、いつ訪れるのだろうか?

◆1回使うと寿命が20年縮む

筆者の心配をよそに、タロウはいきなり「ウルトラダイナマイト!」と叫ぶ。
そして炎に包まれて突進し、大爆発! 画面手前に、タロウの腕の破片とおぼしき赤い物体が飛んできた……!
ところが、やがて煙の中からタロウの勇姿が現れる。カスリ傷一つない。
う~む、いったいどうなっておるのだろうか?

タロウ図解

『愛蔵版ウルトラマンタロウ超全集』(小学館)によると、その秘密はタロウだけが持つウルトラ心臓にあるという。
ウルトラ心臓が無事な限り、タロウは不死身なのだ。爆発してバラバラになった細胞はウルトラ心臓のもとに集合し、タロウは甦る。
しかしあまりに危険な技なので、これを1回使うと寿命が20年縮まってしまうらしい……。

すごい話だが、ナゾは深まるばかりだ。
タロウしか持っていない心臓なのに、なぜそこまで詳しくわかっているのだろう?
それが明らかになっているからには、タロウと他のウルトラ星人を両方何度も爆発させるという、対照実験が行われたはず。ウルトラ心臓を持っていない他の戦士はどうなったのかなあ。ウルトラのヒトたちは、どうも命を粗末にしすぎなのでは……?

それに、タロウは1万2千歳である。ウルトラの父など、16万歳。ウルトラ一族は死ぬほど長生きなのだ。
仮に平均寿命が20万歳だとすれば、ウルトラダイナマイトが寿命を20年縮めたところで、一生の1万分の1。人間にしてみれば3日である。
逆にいえば、生涯に1万回使えるわけで、そう考えるとあまり危険なワザという印象は受けませんなあ。

◆あまり効かないのでは?

心臓以外の体を爆発させ、相手の怪獣を吹き飛ばすウルトラダイナマイト。
そんなコトをして、ウルトラ心臓は損傷しないのだろうか。
仮に無事だったとしても、一度爆発したらしばらくは心臓だけになってしまうのだ。
まったくの無防備であり、これで怪獣が無傷だったら一大事。命の心臓をもてあそばれて、ホントに絶命する恐れがある。
ウルトラダイナマイトは両刃の剣であり、一撃必殺の破壊力が要求されるということだ。

ところがこの必殺技、画面を見ると、炎と煙はせいぜい半径50mくらいにしか広がっていない。前述した全身爆発にはほど遠い威力だ。
そもそも本当に全身が爆弾化するのなら、手足の破片すら残らないはず……。

これらの描写から考えれば、どうも体の一部が爆弾化するワザのようである。
爆風が及ぶ範囲が半径50mだとすれば、ウルトラダイナマイトの威力は、爆薬4.7t分。タロウの全体重5万5千tの0.009%にすぎない。

うーん、これで一撃必殺になるのかなあ?
爆発はタロウの体内で起こる。爆風を直接受けるのはタロウ自身の肉体であり、怪獣にダメージを与えるのは、彼の飛び散った破片ということになるが……。

タロウ図解2

爆薬4.7t分のエネルギーが、総重量5万5千tの破片にすべて与えられたとしよう。この場合、飛び散る破片の速度は時速96㎞でしかない。う~ん、たいしたコトないなあ。
そもそもタロウは、時速1240kmで走れるという設定なのだ。体当たりをブチかましたほうが、300倍も効果的である。

こうやって考えてみると、ウルトラダイナマイトはなかなか悲しい技ではないか。
そもそも爆発させた部分は爆薬として消費されてしまうのだから、この技を使うたびにタロウはだんだん痩せていくはずである。
1発ごとに4.7tずつ減っていったら、1万回後には8千t。体重が7分の1になったら、そりゃ死ぬだろう。
なるほど、全体には怪しさに満ち満ちているものの、その点だけは充分ナットクできるワザなのだった。【了】

イラスト:近藤ゆたか