プリキュア目からビーム

かつて、アニメや特撮には、目から光線を出す人々がたくさんおったのう。スーパーマンも鉄腕アトムもウルトラマンもマジンガーZも目から光線をビービー出したものじゃ。しかし、近年はそういう者もめっきり減って……と昔を思い出して老け込んでいたところに、読者から「キュアラブリーが目から光線を出してましたよ」という嬉しいお知らせが!

おお、キュアラブリー! 歴代プリキュアのなかでも、ひときわ戦闘的なキュアラブリー。悪の戦闘員たちを容赦なく蹴散らすキュアラブリー。
確かに彼女だったら、目から光線を出すという大技を披露してくれるかもしれない。

該当のシーンは、アニメの第19話「サッカー対決!チームプリキュア結成!」で見つかった。
サッカーの試合中、悪の幻影帝国のオレスキーが、怪物サイアークと、戦闘員チョイアークを率いて出現。プリキュアも変身して大乱戦となる。
戦いのさなか、愛乃めぐみが変身したキュアラブリーは、目から光線を発射してチョイアーク2名をぶっ飛ばす。そして「ふう」とため息をつき、次の戦いへ向かうのだった。

……えっ、それだけ!? せっかく目から光線を放つという大仕事を成し遂げたのに、その戦果は下っ端退治!?
う~む、あまりにももったいない。周囲の皆さんも、久しぶりの偉業を万雷の拍手で称えていただきたい!
と叫んでも、声はまったく届きそうもないので、ここは科学的に考えよう。目から光線を出すとはスゴイことだが、どういうメカニズムなのだろうか?

目からレーザー?

キュアラブリーが目から光線を放つ技の名は「ラブリー・ビーム」。
両手の親指と人差し指で輪を作り、眼鏡のように両目に当てると、目からピンクの光線が発射される。

これはどういう現象なのだろう。
生物の目は、光を受け取るための器官である。ネコの目は車のライトを浴びると光るが、あれは光を出しているのではなく、反射しているだけだ。
もちろん「目から」と限定しなければ、光を放つ生物は珍しくない。ホタルなどは、食べ物から得たエネルギーを光に変える仕組みを持つ。ただし、異性を呼び寄せるために仄かに光るだけで、敵を攻撃するほどの威力はない。
これに対してラブリー・ビームは、すごい現象を起こす。細い光線が一直線、いや両目からだから二直線に飛び、人間をぶっ飛ばすのだ。

その威力から察するに、放たれているのは「レーザー」であろう。
レーザーは強いエネルギーを持つ光で、これを作るには、①エネルギー源、②エネルギーを溜める物質、③合わせ鏡が必要だ。
②の物質にエネルギーを溜めて、一斉に光を放出させ、鏡のあいだを往復させることで、光の山と谷をそろえて発射する。
とレーザーの説明はしてみたけど、生物がこれを目から放つことなど、できるのか!?

プリキュア目からビーム図解

虹彩に何が起きた?

キュアラブリーが目からレーザーを放つには、前述の①~③が揃っている必要があるが、実際にはどうなのか。
まず、エネルギー源。現実のレーザーには光や電気が使われるが、理論的にはどんなエネルギーでもレーザーは作れる。キュアラブリーの体内には、食べ物から得たエネルギーがあるはずだから、これはOKといっていいだろう。
次に、エネルギーを溜める物質。人間の目には「虹彩」というドーナツ状の筋肉があり、色素が含まれる。色素のなかにはエネルギーを溜めるものがあり、実際にレーザーに使われている。めぐみがキュアラブリーに変身するとき、虹彩の色素もいっしょに、エネルギーを溜める色素に変身するとしたら……、えっ、これもOKってこと!?
最後に合わせ鏡。虹彩の色素にエネルギーを溜める以上、2枚の鏡は虹彩に設置するしかないだろう。鏡のあいだの距離は虹彩の厚さがあれば充分だ。キュアラブリーが両手をメガネの形にした瞬間、虹彩の前面と後面に鏡が出現するとしたら、ややっ、これもOK!?

うーむ、驚いた。色素が変身するとか、虹彩に鏡が出現するとか、さまざまな困難はあるものの、それさえ乗り越えれば、理論的には目からレーザーも放てるということだ。

だが、目を鏡なんぞにしたら、まわりが見えなくなるのでは?
これは確かに心配になるが、案外と大丈夫ではないかなあ。前述したように、虹彩はドーナツ状の筋肉で、その穴が瞳だ。外部からの光は瞳を通して目の内部に入ってくるから、虹彩が鏡になっても視力を失ったりはしない……はず。
ただし、虹彩を往復する光が、ちょっとでもズレて瞳に入ったら、自分の網膜が焼けて大変なことになる。キュアラブリーはくれぐれも気をつけよう。

8tも痩せてしまう! 

こうして発射されたレーザーの威力はどれほどか?
レーザーは、現実世界では鉄板を焼き切ったりするのに使われるが、キュアラブリーはチョイアークに対して、そんなにヒドイことはしない。ちょっとぶっ飛ばすだけだ。まあ、それもヒドイけど。

科学的に考えれば、レーザーで成人男性2名をぶっ飛ばすとは、大変なことである。
光にも物を押す力はあるが、きわめて弱いからだ。人間を飛ばそうと思ったら、猛烈な出力が必要になる。
画面で測定すると、照射時間は0.2秒。チョイアークの体重が70kg、飛んだ距離が3mとすると、ラブリー・ビームの出力は15億kWという計算になる。なんと日本全国の発電力の15倍!
こんな大出力のレーザーを0.2秒も放ったら、320tの鉄を溶かせる。チョイアーク2名など、影も形も残さず蒸発させることだろう。
しかし、キュアラブリーはそれをせず、この超出力のレーザーを、軽くぶっ飛ばすのに使っているのだ。優しいじゃないか、キュアラブリー。

心配なのは、ここまでの大出力となると、キュアラブリーの体内でも莫大なエネルギーが消費されたと思われること。
生物の体内でエネルギーを蓄える脂肪に換算すると、8tなのだ。キュアラブリーは一瞬でそれだけヤセた可能性がある。おお、効果絶大、目から光線ダイエット!
などと喜んでいる場合ではない。8tも痩せちゃったら、自分自身が消滅する!

しかも、人間2人を吹っ飛ばす以上、自分も反作用を受けるはずだ。
キュアラブリーの体重を45㎏とすれば、チョイアーク2人の体重はその3倍ほどだろう。ボンヤリしていたら、自分は3倍の9mもぶっ飛ばされる! 結局自分のほうが、ダメージが大きい!

うーむ。これほど大変なことをやりながら、ため息をついただけで次の戦いに向かったキュアラブリー。戦闘的だけど、ヒロインの鑑ですなあ。【了】