イナイレ・タイトル

どういうことかと聞きたいのは、筆者も同じである。
『イナズマイレブン』のキャッチフレーズは「これが超次元サッカーだ!」。その言葉のとおり、通常のサッカーでは考えられないことが、次々と起こる。
天高く選手が跳び上がったり、炎とともにボールを蹴ったり、キーパーの手から光り輝く巨大な手が現れてボールを止めたり ……。
そんな超次元的なコトが起こるのは、試合中ばかりではない。アニメ版『イナズマイレブン』第1話を見たとき、筆者は腰が抜けるほど驚いた。

その冒頭では、帝国学園サッカー部が、いかに恐ろしいチームであるかが、これでもかと描かれた。全国中学サッカー大会で、なんと40年間も優勝を続ける超強豪校! 絶対的な権力を振るう影山零治は「総帥」と呼ばれる。
そして練習試合では、強烈なシュートが相手チームの選手たちをはじき飛ばし、地面を深々とえぐる。試合終了のホイッスルが鳴り、勝者は帝国学園、スコアはなんと13─0!
練習試合についてきていた影山は、ガックリ両手と膝をついた相手校の校長先生にこう言う。
「お前たちは敗れた。帝国のやり方は覚えているな」。校長先生は「ううっ」と呻くばかり。
その顔の前に、影山は「解体許可証」と書かれた紙をハラリと落とす。そして「敗者に存在価値はない」と言い捨てると、キャプテンの鬼道有人が「やれ!」と叫ぶ。
直後、帝国学園の旗を掲げた移動用のバスが校舎に激突! もうもうと上がる土煙のなか、校舎は次々に崩れ落ちていくのだった……。

な、なんだ、こりゃ!? 
練習試合に勝ったという理由で、相手校の校舎を破壊!
しかも、その手段はバス!? いったいどうなってんの!?

どれだけの学校が壊された?

サッカーの練習試合で負けると、校舎を破壊される。
一般の生徒にとっては、とんでもなく迷惑な話だ。壊すなら、せめてサッカー部の部室にしてもらいたいが……。いや、部室であっても、試合の勝ち負けで壊したりしたらダメだろう。
影山の「帝国のやり方は覚えているな」というセリフから考えると、帝国学園はこんな凶行を何度も繰り返してきたのだろう。他の学校は、こういう無法な行いをしてきた学校と、なぜ練習試合をしようと思うかなあ? しかも相手は40年間無敗。普通は、対戦を断わると思うのだが……。
疑問は尽きないが、ともかく主人公・円堂守が属する雷門中サッカー部は、この帝国学園と練習試合をすることになった。
理事長の娘・雷門夏未は、キャプテンの円堂に通告する。「試合に勝てなかった場合、サッカー部は廃部。決定事項よ」。
この試合は、学校側が、ロクに練習をしないサッカー部にしびれを切らし、予算の削減のためにサッカー部を潰そうと考えて組んだものらしい。
でも、夏未お嬢さま、コトはそれだけで済まないよ。負けたら学校を破壊されるんだよ~。

夏未お嬢さんのためにも、帝国学園がこれまでどれほどの学校を破壊してきたのか、計算してみよう。
強豪校だから、練習試合を年間50試合やるとすると、40年間で2千校。東京都にある中学校は約800校だから、帝国学園が都内の学校と試合をしてきたとしたら、1校が平均2・5回ずつ壊されていることになる。う~ん、迷惑な学校だなあ。

バスで校舎を壊せるか?

雷門vs帝国の試合がどうなったかはアニメで確認してもらうとして、筆者が気になるのは、バスで校舎を壊したという劇中の事実だ。
鉄筋コンクリートの校舎にバスがぶつかったら、普通はバスのほうが壊れるような気がするんだけど。

前述したように、校舎の破壊に使われたのは、サッカー部の移動用バスだ。
そのバスには窓もなく、外観はまるで装甲車だった。全体に、むちゃくちゃ頑丈に作られているのだろう。
では、とてつもなく頑丈なバスがぶつかれば、鉄筋コンクリートの校舎が壊れるのか?
それは校舎の構造と強度にもよるだろう。
ある中学校の校舎を測定すると、校舎の柱は1辺90㎝、壁の厚さは20㎝。さらに壁の下には高さ77㎝、厚さ70㎝の基礎が、柱と柱のあいだに伸びている。
帝国学園のバスは、これらを砕氷船のようにバリバリ砕き、教室の壁をぶち抜いて、教室の床もバリバリ砕くのだろう。校舎を横断すると、反対側の柱・壁・基礎に突き当たるから、これらも破らねばならん。想像以上に大変そうだ。

普通に考えれば、ぶつかっては止まり、バックして再びぶつかっては止まることを根気強く繰り返すしかないだろう。
当然、このバスには運転手がいたはずで、「何の因果でこんな仕事を……」と唇を噛みつつ業務に励んだに違いない。おまけに中学生に「やれ!」などと命令されて。運転手さんの心情、想像するに余りある。
想像するに、実際にバス1台で黙々と作業を続けていくと、ギリギリで校舎を支えていた最後の柱が壊れた瞬間、梁や天井がドドド~ッと崩れるだろう。落下してくるコンクリートの塊にバスは埋もれ、身動きできなくなる。ハンドルに突っ伏す運転手さん。胸のポケットから、家族の写真がはらりと落ちる……。

帝国学園バスに乗ってみたい!

はっ。いつの間にか妄想の世界をさまよい歩いてしまった。もちろん劇中で、そんなことが起こっていたわけではありません。
帝国学園のバスは、何の苦もなく校舎を破壊していた。次々に崩れゆく校舎は、もうもうたる土煙に包まれ、バスが校舎を破壊する状況が確認できないほどだ。筆者が視察した校舎の構造と照らし合わせれば、バスは2組の柱・壁・基礎、廊下と教室の床、屋内の壁、これらを一撃でぶち抜き、校舎が崩落する前に突き抜けたと思われる。

これを実際にやるには、猛烈なスピードが必要だ。帝国学園サッカー部のバスが、公道を走行できる最大のサイズと重量だったとすれば、高さ3・8m、幅2・5m、全長12m、重量20t。バスの天井と、校舎の2階を支える梁の高低差は50㎝となる。

イナイレ図解

この場合、壊しただけでは、バスは崩落した校舎に埋もれてしまうから、その前に反対側まで走り抜ける必要がある。崩れた2階の床が、バスの屋根に落ちてくるまで0・3秒。校舎を壊したうえで、この間に走り抜けるための速度を計算すると、時速178㎞!

あれっ。普通のバスには無理だが、決して自動車に出せない速度ではない。
ということは、猛烈に頑丈でパワフルな20tのバスがあれば、校舎を壊すことも不可能ではないってこと!?
う~む、われながら驚く結論である。もちろん帝国学園のバスを褒め称えるつもりはないのだが……。
いろんな意味で「どういうことでしょう?」と聞きたい『イナズマイレブン』の世界なのだった。やはり超次元は恐ろしい!

イラスト:近藤ゆたか