銀魂神楽タイトル

『銀魂』は、開国から20年後の物語。
ただし、この世界では、鎖国の扉を押し破ったのは外国人ではなく宇宙人で、幕府も瓦解しなかった。主人公・坂田銀時は、桂小太郎や高杉晋助らとともに攘夷の戦を起こした。だが、力及ばず時代は変わり、今は万事屋稼業に精を出している。
そんな銀時のもとに、宇宙最強の戦闘民族・夜兎族の神楽がやってくる。10代半ばの美少女だが、コンクリートの壁にパンチでヒビを入れ、バイクにはねられても平気。果ては、驚異の頑丈さを誇る銀時の木刀をも折ってしまう。

ここで考えたいシーンは、銀時らと袂を分かった晋助が、幕府転覆を狙って起こした騒動のさなかに発生した。
神楽のゆく手に、二丁拳銃の来島また子が立ちはだかる。神楽がジャンプして襲いかかると、また子は「空中では自由もきくまい」と独白してドンドンドンと3発を速射。神楽はそれを、両手の指と歯で受け止めて、ニッと笑う……!
あまりの離れ業である。神楽はどれほどの運動神経を持っているのだろうか?

ピーナツですら危険!

小学生の頃、ピーナツをポイッと投げ上げて、パクッと口で受け止める練習をしていたら、母の叱声が飛んできた。「気管に入ったら、どうするの!?」。
当時は「出せばいいじゃん」と軽く考えていたが、いまネットで調べてみると、ピーナツが水を吸って膨満し気管を閉塞させるとか、砕けて気管支へ入り肺炎を誘発するとか、そうなったら全身麻酔による処置が必要とか、オソロシイことが書かれている。
ピーナツでさえ命に関わるのに、銃弾を口で受け止めるとは、神楽も無茶をしたものだ。
何より、ピーナツと銃弾では、スピードがあまりに違う。高さ1mまで投げ上げたピーナツは秒速4・4mで口に飛び込むが、拳銃の弾丸の速度は秒速200~600m。中間の秒速400mとしても、速度は90倍である。
しかもピーナツは、口を開けて待っているだけでいいが、銃弾で同じことをすると、喉の裏側にある延髄や小脳を打ち抜かれる。
そこで生涯を終えないためには、銃弾が歯の間を通過する瞬間、過たず歯を閉じなければなら。閉じるのが早すぎても歯を砕かれ、同じ運命が待っている。

実際に、そんなことができるのか?
銃弾の長さを2㎝とすると、歯の間を通過する時間は0・00005秒。人間が刺激に反応するまでの時間は、最短でも0・1秒と言われるから、これができる神楽は、常人の2千倍も俊敏だということだ。

同時に両手で2発の弾丸を止めたことにも注目したい。
神楽は、銃弾を親指と人差し指ではさんで止めたが、こういう止め方をすると摩擦で高熱が発生する。弾丸の速度が秒速400mなら600度。生物の体を作るタンパク質は、60度以上の温度に達すると、煮えたり焼けたりして元に戻らなくなるが、夜兎族のタンパク質は大丈夫なのだろうか。
そもそも人間は、3個のピーナツを空中に投げ、両手の指と口でキャッチできるものなのか? あ、いや、決してチャレンジしないでください。1個を口で受けるのさえ危ないのに、気が散る要素を2つも加えたら、確実に気管に入る。あまりにも危険です。

弾丸を食いちぎってしまう!

もちろん俊敏なだけでは、銃弾の口キャッチは不可能。歯で挟んだ瞬間に噛むことによって、弾丸の勢いを止めなければならない。
車が止まるのに制動距離を要するように、運動する物体を停止させるには、一定の距離が必要だ。距離が短いほど大きな力が必要だが、このたび許される距離は、最長でも弾丸の長さと同じ2㎝程度である。
この短い距離で秒速400mの物体を止める力とは、物体の重量の40万倍。拳銃の弾丸は10g前後だから、要求されるブレーキ力は4tだ!
これは大変である。神楽が銃弾に4tの力を与えたということは、作用反作用の法則で、銃弾も神楽に4tの力を与えたはず。すなわち彼女の脳は、4tのパンチを食らったのと同じ衝撃で揺さぶられたのだ。
それでも神楽は「ニッ」と笑ってすぐ反撃。脳の耐衝撃力も並ではない。

しかも、神楽の噛む力は4tでは済まない。前述したブレーキ力とは、弾丸の進行方向に平行な、歯と銃弾の間に働く摩擦力に他ならない。
これに対して噛む力とは、弾丸の進行方向に垂直な、歯が弾丸を押さえつける力。前者は、後者の30%前後と推測される。
すると噛む力は、4tの3・3倍で13t!

銀魂神楽図解

こうなると、またまた大変なことになる。
銃の弾丸は鉛でできており、これはそう頑丈な金属ではない。銃弾の直径を1㎝とすれば、この太さの鉛は、わずか240㎏の力で破断するのだ。
神楽が13tもの力で噛んでしまったら、銃弾はプリンのように食いちぎられるだろう。そして、前半部分が小脳や延髄を直撃……! ぎょぎょぎょっ。

この事態をも避けたということは、神楽は銃弾に歯を食い込ませつつ、しかしちぎれはしないように力を加減したのだろう。

――常人の2千倍の俊敏さ、400倍の力、4tの衝撃に耐える脳、弾丸をちぎらないように力加減するテクニック……。歯で銃弾を受け止められるのは、これらをすべて兼ね備えた戦士だけなのである。
さあ、あなたも特訓だ! いやいやいや、だから、やっちゃいけないってば。【了】