ガノトトスタイトル

ガノトトスは『モンスターハンター3G』に登場する魚竜種のモンスターだ。
大きいものは全長20mほどで、翼の生えた竜の姿をしている。顔はサメに似て、尻尾は古代魚を思わせる。
口から猛烈な勢いで水流を放ち、その技はファンの間で「水ブレス」と呼ばれているという。
この技は予備動作が大きく、かわすのは難しくないとも言われるようだが、科学的に考えれば、人間に当たったら大変なことになるすごい武器である。

ダイヤモンドでも切れる!

水ブレスの最大の特徴は、ガノトトスの口から一直線に放たれること。水流というより、まるでビームや光線のようにも見える。
これは、水ブレスが途轍もない速度で噴射されているということだ。

その速度はどれほどか。
ゲームの画面で測定しようとしたのだが、筆者の動体視力では、水流の先端を捕らえられない。空中を運動する物体は必ず放物線を描くはずだが、そのカーブも確認できず、瞬時に画面の外まで一直線に伸びる。
まるでビームや光線のようにさえ思えるが、水流の速度が光速に達することはあり得ない。よってここでは、ライフル弾と同じ秒速1千mと仮定しよう。

それでも、吐き出す水の量も大変なものになる。
ハンターたちの体と比べると、水ブレスの直径は30㎝ほど。この太さで流速が秒速1千mだとすれば、1秒あたり71tの水が発射されている計算になる。25mプールが、わずか5・5秒でいっぱいになる水量だ。
消防のポンプ車の放水量は、最強のものでも1秒に47ℓだから、その1500倍。火事が起きたら、ぜひガノトトスに駆けつけてほしいなあ。

呑気なことを言っている場合ではない。秒速1千mといえば、ウォータージェットカッターの最強クラスに肩を並べる。
これは直径0・1~1㎜のノズルから秒速500~1000mで水を吹き出す機械だ。ゴムやプラスチックなど、刃物では切りにくいものを自在に切断する。鉱物の粉末などの研磨剤を加えれば、鉄でもダイヤモンドでも切断できる!
その原理は「切る」というより、水や研磨剤が当たった部分だけを破壊して吹き飛ばすこと。もしビルなどに当たったら、直径30㎝のキレイな穴が開くはずだ。
ということは、人間も水ブレスを食らったら、クッキーの型で抜いたように、当たったところだけが、キレイになくなる!? むえ~、オソロシか~。

どういう原理で噴射するのか?

これほどの水流を、ガノトトスはどうやって吐いているのだろうか。

自然界にも、水を吹き出す動物はいる。最も有名なのは、テッポウウオだろう。
このスズキ目テッポウウオ科の魚は、水面に出した口から水鉄砲のように水を噴き出し、草の葉に止まった昆虫などを水面に叩き落として食べる。水が上昇する高度は、1mを超えるという。
こうした行動が可能なのは、上顎の中央に溝がついているからだ。これに舌でフタをして、えらぶたを収縮させると、口のなかの水が飛び出す。スポイトと同じ原理である。

だが、ガノトトスは水ブレスを出すとき、口を大きく開けているし、噴出する水の量も口の容積より明らかに大きい。
すると、もっと体の奥、たとえば胃に溜めた水を、腹筋や横隔膜の力で放出しているのではないか?
……と想像してはみたが、胃からナニモノかを吐く行為は、通常「嘔吐」もしくは「吐瀉」と呼ばれる。ハンターに襲われたガノトトスは、怒りのあまりエズイてしまい、胃の内容物をドバーッと……う~ん、浴びたくないなあ。

いやいや、ここでこの技の名が「水ブレス」であることを思い出そう。
「ブレス」とは、『モンハン』の世界では炎などを噴き出す技の呼称だが、一般社会では「呼吸」のこと。自然界の魚たちは、飲み込んだ水をエラに通し、酸素と二酸化炭素を交換して、用の済んだ水をえらぶたから排出している。
つまり、魚がえらぶたから水を出すのは、呼吸すなわちブレスのためなのだ。魚竜種であるガノトトスは、その水を体内の「ブレスぶくろ」のようなものに溜めておいて、いざというとき攻撃に使うのではないだろうか。

ガノトトス図解

「ただの水なら浴びてもいいか」などと納得してはいけない。それが当たれば、あなたや私の体の一部がスッ飛んでいくことに変わりはないのだ。

ガノトトスの天敵とは!?

威力も原理もオボロゲながらわかってきたが、大きな謎がある。
この強力な水流は、ガノトトスが生きるのにどう役立っているのだろうか。
動物のさまざまな能力は、捕食、防衛、縄張りやメスをめぐる闘争、異性の誘引のいずれかに関連している。
捕食のためだとしたら、威力がありすぎる。こんな水流を食らったら、餌となる動物はバラバラに飛び散ってしまい、食べることはできない。
また、ハンターたちに向かって発射してくるのだから、間違っても異性に興味があってのことではないだろう。

したがって、防衛か闘争のための武器ということになる。
自然界の動物にも、防衛や闘争のために、特異な能力を備えたものたちがいる。ハリネズミやヤマアラシのトゲはアルミ缶など貫通するほど鋭く、スカンクやイタチは肛門の近くから猛烈な悪臭のある粘着質の分泌液を発射する。
タコやイカはスミを吐くし、ハリセンボンというフグ目の魚は、敵に襲われるとウロコの変形したトゲを立て、クリのイガのようになる。
これらの動物に共通するのは、いずれも体が小さいことだ。ゾウやキリンは、その体の大きさのみでライオンなど寄せつけない。前に挙げた動物群は、特異な能力があったからこそ、小さな体でも生き延びてこられたのだ。

すると、ガノトトスはどうなるのか?
自然界に学べば、モンハンの世界には、ガノトトスよりはるかに大きくて強いモンスターがいることになる。
実際、ゲームには「ダラ・アマデュラ」や「ラオシャンロン」といった巨大な龍がたびたび登場する。ゲーム内で正確な数値は表示されないが、どちらも、全長400mはあるという説も!
おお、これは合点の行く話だ。ガノトトスは彼らのような巨大モンスターが近づくと、水ブレスでわが身を守ることで生き延びてきたということだろう。
水ブレスのとんでもない破壊力にも、きちんと理由があったのだなあ。ナットク。【了】