ミクタイトル

初音ミクはすごい歌手だ。
彼女が歌った楽曲をネットで検索してみると、なんと5万5千曲もヒットした!

そこまで精力的な活動ができるのは、もちろんミクが実在する歌手ではないからだ。
『初音ミク』とは本来、「ボーカロイド」と呼ばれる歌唱ソフトの名前。歌詞と音階を入力すると、愛らしい声でそのとおりに歌ってくれる。
そのイメージキャラクターとしてデザインされた少女が、ソフトと同じ名前の「初音ミク」で、身長158㎝、体重42㎏、年齢16歳、歌やダンスが得意という設定である。
むちゃくちゃかわいいし、性格もよさそうだし、彼女のために作られた楽曲数が5万5千曲というのも、わかるような気がする。実在すればいいのになあ、初音ミク……。

しかし、科学的に気になるのは、その緑色の長い髪だ。
ツインテールにした髪は足首まで届き、先端の近くが大きく膨らんでいる。非常にボリュームのある髪で、質問にあるとおり確かに重そうだ。この髪型で歌ったり踊ったりできるのだろうか。
もし初音ミクが実在したら……と妄想を膨らませつつ、その髪はどれほど重いのかを考えてよう。

髪の毛の量が100万本!

重さを計算するために、まずは全体のボリュームが知りたい。
ミクのイラストを測定し、身長と照らし合わせて計算したところ、ゴムで縛ったところから、髪の先端まで、長さは左右とも1m42㎝もある。
長さにも驚くが、見逃せないのは、先端近くが大きく膨らんでいることだ。

そもそも人の髪とは、ツインテールにしたときにどれほど広がるのだろうか。
これを確かめるため、筆者の姪のNちゃん(高校生)に背中まで伸びた髪をツインテールにしてもらい、測定してみた。
すると、最も広がった部分は、前後が13・4㎝、横幅が8・1㎝だった。

一方、ミクのツインテールの最も広がった部分は、なぜそうなっているのは不思議だが、断面が半円形になっている。その直径は46㎝。
これはスゴイ! いちばん広がった部分で比べると、ミクのツインテールの断面積はNちゃんの10倍になる。

これを単純に考えれば、髪の本数がNちゃんの10倍あるということだろう。
日本人女性の髪は10万本あるといわれるから、ミクの髪は100万本! あまりに髪の多い体質である。

だが、冷静に観察すると、ミクのツインテールの根元、すなわちゴムで束ねたあたりの太さはNちゃんと変わらない。本数が10倍なら、この部分の太さも10倍になると思うのだが……。
さんざん考えたが、理由はこれしか思い浮かばない。
おそらくミクの髪は、本数は一般女性と同じ。ただし、1本1本の髪が、先端に向かって太くなっているノダ!
いちばん広がった部分は断面積が10倍で、直径は3・2倍!

彼女の髪は、なぜそんなふうになっているのだろうか。
髪は死んだ細胞だから、生えてから太くなることはない。髪に太い部分があるとしたら、そこは生まれたときから太かったはずである。
だとしたら、ミクの髪で最も膨らんでいる部分(ゴムで束ねた点から、90~130㎝あたり)は、いつ生えたのか?
人間の髪は、1日に平均0・4㎜伸びるという。ということは、もっとも広がった部分が生えたのは、今から9~6年前。ミクが7歳から10歳にかけて、ということになる。

ミク図解1

髪の太さは、毛根の大きさで決まる。小学校1年生のとき、彼女の毛根は、今より直径が3・2倍も大きかったということだ。その頃、コンブやワカメなど髪にいい食べ物をいっぱい食べたのだろう。
そして、その後は少しずつ量を減らしていって、やがて食べるのをやめた(あるいは、必要最小限にした)。
その決断は賢明であった。もしそのまま食べ続けていたら、根元からぶっとい髪が噴水のように広がり、ヤシの木のような髪型になったはずである。

髪の毛の重さが6・2㎏!

この結論をもとに、ミクのツインテールの重さを求めよう。
日本人の髪は、直径0・1㎜といわれる。ゴムで束ねたあたりは、ミクの髪の太さもこれぐらいなのだろう。
そこからだんだん太くなって、先端の近くの40㎝ほどは0・1㎜の3・2倍、すなわち0・32㎜となる。
それでも先端は尖っていることなどから計算すると、髪1本の重さは68㎎である。

そして、ミクは髪の本数にして10分の1ほどを前髪として垂らし、残りの半分ずつをツインテールにしている。彼女の髪が一般人と同じ10万本なら、ツインテール1本は髪4万5千本。
すると重さは、うおっ、片方で3・1㎏。両方合わせて6・2㎏だ!

これは重い。初音ミクの体重は42㎏だから、髪を除く本体は35・8㎏ということだ。
このスレンダーな体で、頭の両側に2ℓ入りのペットボトル1・5本ずつをぶら下げているも同然。
これが初音ミクの日常生活なのだ。歩くのも大変だろうし、立っているだけで首筋が攣ってしまいそうだ。
得意のダンスを練習するときなど、首が髪にグリングリンと引っ張られてしょうがないだろう。
想像以上に大変そうな暮らしである。

髪のお手入れも大切よ!

彼女がとっても苦労すると思われるのが、髪の手入れだ。
調べてみると、女性の髪の正しい洗い方を詳しく説明しているサイトがあった。
1 洗う前に目の粗いブラシでとかして、もつれを取り、ほこりを落とす
2 髪を地肌から濡らし、両手のひらに挟んで毛先の水を切る
3 シャンプーで頭皮を洗う。これによって髪の毛も自然に洗える
4 よくすすぎ、水を切る
5 トリートメントを指にもつけて、髪の中間から毛先に、手櫛でまんべんなくなじませる
6 蒸しタオルで髪を覆って3~5分待つ
7 すすいで水を切る
8 タオルで水分を拭き取る
9 洗い落とさないトリートメントをつける
10 ドライヤーを当てる
う~ん、ミクほどの髪となると、手入れもなかなか大変そうだ。
まず問題は「1」。筆者の見解によれば、ミクの髪は先端ほど太くなっているはずなので、ブラシが引っかかってしまうだろう。
すると、ほこりを落とすためにも、「3」では頭皮だけでなく髪全体もていねいに洗ったほうがいいような気がする。だが、多くのサイトで「髪をもんだり、こすり合わせたりしてはいけない」と書かれている。いったいどうすりゃいいの?
 また「5」「9」のトリートメントと「10」のドライヤーでは、髪の表面積に比例する時間がかかるはず。髪の長さ30㎝の一般女性と比べると、髪がだんだん太くなっているミクの場合、表面積は実に11倍。一般女性が「5」「9」「10」にそれぞれ10分かかるとすると、ミクはその11倍で各1時間50分!
そして「6」で、ミクの髪の毛をひと塊にすると、その直径は23㎝になる。3~5分とはいえ、自分の顔より大きな塊を頭に乗っけて風呂に入るのは、本当にツラいだろう。

ミク図解2

そんなこんなで、髪のお手入れには、全部で8時間くらいはかかるんじゃなかろうか。

うう~ん、ミクが実在したらいいのに……と一瞬でも思った自分が愚かでした。
実在したら、日々の生活が、あまりに大変。おとなしく、ネットのミクちゃんを応援しようと思います。【了】