ヤマトタイトル

波動砲とかめはめ波。
『宇宙戦艦ヤマト』と『ドラゴンボール』という、まったく世界観の違う作品の決めワザだ。
だが、どちらも「波」を使った武器であり、そう考えると比較してみたくなる。

筆者としては、波動砲やかめはめ波が何の「波」なのかを知りたいが、どちらも詳細は不明。そこで原理はさておき、それぞれの劇中で、波動砲とかめはめ波が実際に何を破壊したかを見ながら、両者を比べてみよう。

波動砲とかめはめ波は、何を破壊した?

『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲は、1974年から放送されたTVアニメ第1シリーズ全26話では、実はたった4回しか使われていない。
第1射 木星の浮遊大陸を消滅させた
第2射 オリオン座α星で行く手を阻むプロミネンスを吹き飛ばした
第3射 バラン星で人工太陽を破壊した
第4射 ガミラス星で海底火山脈を撃ち、大噴火を誘発して星を崩壊させた
このうちもっとも威力があったのは、浮遊大陸を破壊した第1射であろう。

一方、かめはめ波が破壊したもっとも大きなものは、なんと月である。月の破壊は、主人公の悟空ではなく、彼の師・亀仙人によって行われた。
第21回天下一武道会で亀仙人は、弟子の悟空とクリリンが簡単に優勝して慢心するのを防ぐため、ジャッキー・チュンと名乗って出場し、準決勝でクリリンを下して、決勝戦で悟空と対戦する。試合中、悟空は満月を見て大猿に変身し、武闘場を壊し始める。亀仙人は観客を守り、悟空を元に戻すために「かめはめ波マックスパワー」で月を跡形もなく破壊したのだ。

すると浮遊大陸と月は、どちらを破壊するほうが大変なのか、という話である。
もちろん、それらが両者の破壊できる最大のものとは限らないが、ここでは「劇中で描かれたエピソードからわかる限り」という条件の下で、両者の威力を比較してみよう。

浮遊大陸と月を比較する

月は、直径3566㎞、質量7350京t。直径は択捉島から与那国島までの距離を超え、質量は富士山の7千万倍もある。これだけ巨大なものを壊したかめはめ波の威力は、つくづく侮れない。
浮遊大陸については、『ヤマト』劇中のナレーションが「ほぼオーストラリア大陸と同じ大きさ」と説明していた。オーストラリア大陸は、面積が761万㎢、東西の差し渡しが4千㎞、南北3千㎞。おお、差し渡しでは、オーストラリアと月の直径は同じくらいなのか。比べてみるもんですなあ。

しかし、月が球形であるのに対し、浮遊大陸は「大陸」だけに上下には薄い。アニメの画面で測定すると、上下の高低差は、差し渡しの4分の1ほど。オーストラリア大陸と面積が同じで、上から見た形が円だとすれば、差し渡しは3100㎞、高低差は810㎞となる。密度が地球の岩石と同じなら、その質量は620京tだ。

ヤマト図解

これは月の12倍分の1である。すると、かめはめ波は波動砲の12倍の威力があったということ!? いや、実はそれだけには留まらない。
天体や大陸ほども大きな岩石では、各部がお互いを引き寄せる重力の影響が無視できないため、破壊するには質量比を超えるエネルギーが必要になる。
具体的に計算すると、月を破壊するエネルギーは、浮遊大陸の破壊するエネルギーの66倍である。つまり、かめはめ波のエネルギーは波動砲の66倍。この比較においては、かめはめ波の大圧勝! 残念だったねえ、ヤマトの諸君!

どんなふうに壊したか?

デスラー総統ならこの時点でヤマトの負けを確信するだろうが、簡単に諦めないのがヤマトの立派なところ。筆者もそれに倣って、いろいろ調べてみると、おお、なんと本当にヤマト逆転の可能性が出てきた!

『ドラゴンボール』では、亀仙人が月を壊した12年後に、なんと今度はピッコロが月を破壊している。月は亀仙人が壊したはずでは!?とびっくりするが、これは科学的にもあり得る話だ。
12年のあいだに、飛び散った月の破片が互いの重力で寄り集まって、再び月に戻っていたのではないだろうか。
実際、先に示した比較は、月と浮遊大陸を破壊して、それぞれの破片を重力に逆らって飛び散らせるためのエネルギーである。
一方、『ヤマト』の浮遊大陸破壊シーンを観察すると、初め大きく砕けた破片が、だんだん細かく砕け、最後には赤熱して消えている。これを見る限り、波動砲は浮遊大陸を打ち砕き、破片を飛び散らせただけではない。どうやら砕かれた浮遊大陸を溶融し、蒸発させた模様なのだ。

岩石を蒸発させるには、破壊するよりはるかに大きなエネルギーが必要だ。すると、波動砲の威力は、これまで考えてきたレベルでは済まないことになる。
月の破壊と浮遊大陸の蒸発、それぞれに必要なエネルギーを算出してみると、かめはめ波は120000000000000000000000000000J。
一方、波動砲は300000000000000000000000000000J。
前者が全世界で消費されるエネルギーの2億6千万年分、後者が6億6千万年分。なんと、波動砲の威力がかめはめ波を2・5倍も上回るという計算に!

意外なところで勝敗が!

と、ここまで威力を比べてきたが、威力がありすぎて、なんだかワケがわからなくなってきた。1隻の宇宙戦艦や1人の人間が放つエネルギーとしてはあまりにケタが大きい。ヤマトや亀仙人は、この決めワザを使いこなせるのだろうか。

銃を撃てば反動があるように、何かを発射すると、反作用が返ってくる。
冒頭にも述べたが、かめはめ波や波動砲が何の「波」かはわからない。だが、ナニモノかを発射したときに、反作用がもっとも小さくて済むのは、光を放つ場合だ。ここでは反作用の最小値を求める意味で、波動砲とかめはめ波を光に置き換えて考えよう。

亀仙人は、かめはめ波最大出力を出す直前、突如として筋肉モリモリになっていた。彼の体重が100㎏だったとして、全世界2億6千万年分のエネルギーを放つと、その反作用で自分は光速の99・9999999999999999997%で後ろへぶっ飛ぶ!
対するヤマトの重量は、6万2千t。この宇宙戦艦が全世界6億6千万年分のエネルギーを放ったとき、反作用で飛ばされる速度は、光速の99・999999998%。
当然だが、重量の軽い亀仙人のほうが激しい勢いでぶっ飛ばされる。

彼らが元の場所に戻ってくる方法はただ1つ。
一刻も速く反対側に向かって同じエネルギーを放つしかない!
亀仙人は、かめはめ波を撃ったらすぐさま反対側にかめはめ波を打ってまず停止し、もう1発同じ方向に撃って元の場所に戻り、さらに反対側=初めに撃ったのと同じ方向へ1発撃って停止する。
つまり、1発のかめはめ波を撃ったら、余計にあと3発撃たねばならない。あまりにも大きなエネルギーをぶっ放すと、後の対応が大変なのだ。

ところが、ヤマトの波動砲は連射ができない。
最初の1発を撃ったら、後ろ向きに跳びっ放し。
う~む。撃った後のことまで考えれば、かめはめ波のほうが優れた決めワザと言えるかもしれません。ちょっと意外な理由ですが。【了】