web用気円斬タイトル画

『ドラゴンボール』には、いろいろ魅力的なヒトビトが出てくるけれど、なかでも筆者が「立派ですなあ」と思うのは、クリリンである。

悟空とともに亀仙人のもとで修行を積み、かめはめ波を身につけて、オリジナルの技も編み出し、3度も死んだが生き返り(!)、セル戦までは最前線で戦い抜いた。
まわりはみんなサイヤ人や、他の宇宙人や、魔族や、人造人間。純粋な地球人は、クリリンただ1人! 

そんなクリリンの技の一つが気円斬だ。
輝く円盤がフリスビーのように飛んで行き、さまざまなものを斬る!
ここでは、この技の威力と、その本当の恐ろしさを考えてみたい。

気円斬とはどんな技?

クリリンが初めて気円斬を披露したのは、ベジータ(サイヤ人)とナッパ(サイヤ人)に対してだった。
2人を迎え撃ったのは、クリリン、悟空の息子の悟飯(サイヤ人と地球人のハーフ)、ピッコロ(魔族)、天津飯(三つ目人の末裔)、餃子(不明)、ヤムチャ(地球人)の6人。しかし、ヤムチャは斃れ、餃子は自爆し、天津飯も命尽き、残るは3人。
ナッパはその3人をも圧倒するが、ここで出たのだ、気円斬が!

空に向かって右手を突き上げ「はあああ~!!!!」と気合を込めるクリリン。
右手の上に輝く円盤が現れる。直径は1.5mほどか。クリリンが「気円斬!!」と唱え、「とうっ!!!!!」と叫んで腕を前方に振ると、気円斬はナッパ目がけて飛んでいく。
ナッパが「くだらん技だ!」と迎え撃とうとしたとき、ベジータが「ナッパ よけろーっ!!!」と叫ぶ。気円斬はナッパの顔を掠め、さらに後方の大きな岩山をザンッと切断して飛び去る。ナッパの顔には、一筋の傷が残されて、一筋の血が流れたのだった……。

おおっ、すごい威力じゃないか、気円斬!
『ドラゴンボール』の技の多くは「気」から生まれる。気円斬はおそらく「気」を猛スピードで回転させて円盤型にする技なのだろう。

自動車1万2千台がドカッと衝突!?

気円斬が持っていたエネルギーとは、どれほどだろう?
注目したいのは、気円斬で切られた岩山が飛ばされたことだ。マンガのコマを見ると、岩山の頂上に大きな木が生えており、その樹高が5mなら、岩山の切られた部分は直径15m、高さ12m。標準的な岩石の密度から計算すると、推定重量は6千tだ。これが8mほども飛び上がっている。
計算すると、このとき気円斬が岩山に与えたエネルギーは、時速100㎞で走る乗用車が1200台ぶつかるのと同じ。なんとオソロシイ!

しかもそれが、気円斬が持っていたエネルギーのすべてではない。全エネルギーが岩山の切断に使われたら、気円斬はそこで消滅するはずだ。
だが、岩山を吹っ飛ばした気円斬は、その後も勢いを失う様子はなく、そのままシュルシュル飛び去っていった。
仮に切断でエネルギーの1割を失ったとしたら、気円斬は時速100㎞の乗用車1万2千台のエネルギーを持つという話になる。

気円斬には弱点がある!

気円斬に狙われたら、対処のしようがあるのだろうか?
実は、筆者は「気円斬には大きな弱点がある」と思っている。クリリンが気円斬を放ってから、ナッパが「くだらん技だ!」と言ったり、ベジータが「ナッパ よけろーっ!!!」と仲間に注意を促したりしているところから考えると、気円斬は飛んでくるスピードが遅いはずである。
時間が測定できるアニメで同じシーンを確認すると、クリリンが気円斬を投げてから、ナッパの頬を掠めるまで20秒。このときナッパまでの距離は目測50mほどだから、50mを飛ぶのに20秒もかかったということだ。
これは遅い。小学1年生男子の50m走の平均11・51秒(2016年)の半分くらい。具体的な速度は、秒速2・5m=時速9㎞である。

このノロさでは、避けるのは簡単だろう。……と安心するのはまだ早い。筆者が思うに、気円斬の恐ろしさは、別のところにある。

前述のとおり、6千tもある岩山を切断したぐらいでは、気円斬はほとんどエネルギーを失わないのだ。すると、その後もスパスパいろいろなものを切断しながら、時速9㎞で飛び続けるのではないだろうか。しかも高速回転しているだけに、その軌道はフリスビーと同じで、一直線とは限らない……!

これは大変だ。
行く手にあるものは、木だろうと家だろうとスパーッと切ってしまうに違いない。いまこの瞬間にも、あなたや私がいる部屋の壁を切り裂いて、気円斬が現れるかも!

クリリンは、こんな危険な技を何発繰り出したのだろうか。
マンガには描かれていないが、気円斬を体得するまでに、何度も何度も練習したことは確かだろう。そのとき放った大量の気円斬はどうなったのか? ひょっとしたら、いまもエネルギーを失わず、いろいろなものを切りながら、時速9㎞で飛び続けているのでは……。

うーむ。あまりにも深くて怖い『ドラゴンボール』の世界である。【了】

web用気円斬図A

本文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか