web用戦隊vsウルトラマンタイトル画

筆者は読者から多くの質問をいただく。「確かに気になる」という質問があると、すぐに研究するのだが、なかには「ちょっと気になるけど、結果は予想がつくからなあ」と思って、長く手をつけなかったものもある。
その代表例が「獣電戦隊キョウリュウジャーとウルトラマンは、戦ったらどっちが勝ちますか?」という質問だ。

『獣電戦隊キョウリュウジャー』は、スーパー戦隊シリーズの37作目。主人公・桐生ダイゴを中心に、5人のメンバーがカラフルな衣装に身を包んで戦う。
対するウルトラマンは、M78 星雲からやってきた正義の宇宙人で、身長40m、体重3万5千t。マッハ5で空を飛び、腕からスペシウム光線を放つ。
体の大きさも、攻撃力も、ウルトラマンが戦隊を圧倒している。ウルトラマンには「地球上では3分間しか戦えない」という弱点があるが、スペシウム光線をしゅばばば~と浴びせかければ、人間サイズの5人組を倒すのはカンタンだろう。筆者はそう思い込んでいた。

ところが、ある点に着目すると、そう簡単な話でもなさそうなのである。勝負の行方は案外わからない、いや、ひょっとしたら戦隊のほうが有利かも……という気がしてきた。
その点とは、両者の登場シーンである。

戦隊ヒーローの自己紹介

まず、ウルトラマンの登場シーンとは?
科学特捜隊のハヤタ隊員が制服のポケットからベータカプセルを取り出し、右手で高く掲げる。ボタンを押すと、フラッシュビームがまぶしく輝き、光のなかからウルトラマンが現れる。変身を決意してからここまで、5秒!

一方、獣電戦隊キョウリュウジャーの登場シーンは、こんなにシンプルではない。彼らの変身は、桐生ダイゴが「行くぜみんな!」と声をかけるところから始まる。
それに4人が「おう!」と応じ、続いて全員で「ブレイブ・イン!」と声を揃える。
5人は、拳銃のような形の変身アイテム(武器をも兼ねる)ガブリボルバーに、次々にエネルギーをチャージしていく。
チャージが終わると、ガブリボルバーのシリンダーを回し、ラテンの音楽に合わせて、皆でちょっと踊ったりもする。
踊りが終わると、5人そろって「ファイアー!」と叫ぶ。すると、ガブリボルバーの銃口から恐竜の頭のようなものが飛び出し、大きな口を開けて5人の体を飲み込む。恐竜の頭が消えると、5人は5色のスーツをまとっている。これにて変身は完了。所要時間は44秒。かかりますなあ。

だが、これで終わりではない。キョウリュウジャーには、戦隊伝統の自己紹介があるのだ。
5人は建物の上などに飛び移り、レッドが敵に向かって「聞いて驚け!」と叫ぶと、5人は1人ずつ名乗りを上げていく。
レッド「牙の勇者! キョウリュウ・レッド!」どかーん!
ブラック「弾丸の勇者! キョウリュウ・ブラック!」どかーん!
ブルー「鎧の勇者! キョウリュウ・ブルー!」どかーん!
グリーン「斬撃の勇者! キョウリュウ・グリーン!」どかーん!
ピンク「角の勇者! キョウリュウ・ピンク!」どかーん!
セリフのあとの「どかーん!」は爆発音である。科学的には不可解な現象だが、名乗ると、なぜか彼らの背後で爆発が起こるのだ。
自己紹介を終えた5人は「アームド・オン!」と叫んで、建物から飛び降りる。
そして、それぞれの武器を片手に、全員揃って「史上最強のブレイブ! 獣電戦隊・キョウリュウジャー!」と叫んだ後、最後にレッドが「荒れるぜ~! 5人そろって止めてみな!」。
こうして変身と自己紹介がようやく終わり、いよいよ戦いが始まるのだ。

長い!「聞いて驚け!」から49秒。変身を合わせると、1分33秒もかかっている。
ていねいに自己紹介をするのは、すばらしいことである。変身して姿を変えるのだから、新たに名乗ってあげれば、悪の怪人たちも混乱しないですむだろう。
しかし、皆さんもう忘れているかもしれないが、このたび戦おうとしている相手はウルトラマンなのだ。
初めに紹介したとおり、彼は地上では3分しか戦えない。キョウリュウジャーは、その貴重な時間の半分を超える1分33秒を、変身と自己紹介に費やしてしまう!
ウルトラマンは「おいっ、俺には3分間しかないんだ! 急いでくれっ」と言いたいところだろう。待ち切れず、途中でスペシウム光線を浴びせたくなるかもしれない。
だが、相手が自己紹介しているあいだに攻撃するのは、正義のヒーローとしてはもちろん、良識ある社会人としても許されないマナー違反だ。ウルトラマンはじっとガマンして聞くしかない。
その結果、変身と自己紹介が終わったとき、ウルトラマンに残された時間は、わずか1分27秒……。

web用戦隊vsウルトラマン図A

勝負は4秒間で決まる!

だが、1分27秒もあれば、ウルトラマンなら勝てそうな気もする。ただしそれは、彼が残り時間を存分に使えれば、の話だ。
身長40mのウルトラマンが相手となれば、キョウリュウジャーは巨大ロボットを出動させるだろう。戦隊シリーズでは、①敵が最後に巨大化すること、②これを戦隊は巨大ロボで倒すこと、③そして巨大ロボの出動と合体には時間がかかること、これらはすべて脈々と受け継がれている伝統なのだ。
キョウリュウジャーの場合は、まず「獣電巨人」と呼ばれる3体の恐竜型生命体を発進させる。それが合体して人間型の巨人・キョウリュウジンになるのだが、獣電巨人の発進だけで20秒もかかっている。すでに残り時間は1分7秒!
さらに、これら3体の合体にどれほど時間がかかるのか? ドキドキしながら計測すると……、わ~っ! 所要時間は、なんと1分3秒!
合体前の時点で、あと1分7秒だったから、ウルトラマンに残された時間は、たったの4秒ということだ。これでいったい、どう戦えというの!?

最初に「勝負の行方は明らか」と思った対戦も、具体的に考えてみると、まったく意外な展開になることがある。勝負はやってみなければわかりませんなあ。【了】

本文・柳田理科雄
イラスト・近藤ゆたか